17『泣いたら』 ページ17
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「げ、何それ」
珍しく私より早く会社に着いていたスングァンが、私を見るなり顔を歪めた。
そりゃそうだ。こんな風に、スーツに似合わない豪華な花束を抱えて出勤する新入社員など、見たことがない。
「なに、Aちゃん退職でもすんの？」
スングァンの冗談交じりの言葉に、私は腫れて半分開いてない目でジトリと睨みながら、「はい」と彼のデスクにそれを置いた。
「これ、スングァンにあげる」
「え、僕に？なんで、いらないんだけど」
「日頃のお世話になってるお礼」
「嘘つけ！」
私が時間ギリギリに来たからか、話の途中に始業のチャイムが鳴る。
花束をそのままに自分の席に着くと、後ろから「ちょっと！いらないんだけど、ほんとに！ねえ！」と訴えかける声が聞こえたが、無視を決め込むことにした。
そのうち上司らしき人から「朝っぱらからうるせー」と注意され、程なくそれは聞こえなくなっただった。
…まあ、昼休みのチャイムがなるや否や、また抗議に来たのだが。
頬っぺたを膨らませながらプリプリ怒るその姿は、まさにアンパンマンで、なぜか安心してしまう。
そんなスングァンを連れて、私は今日も食堂に向かった。
「…それで、こーんな花束買わされたわけ？」
私が黙ったまま頷くと、スングァンは呆れたようにフォークをくるくると回しながら、「あのね」と説教が始まるおきまりの言葉を口にする。
「なんでもかんでも言いなりになってちゃダメ！嫌なことはちゃんと嫌って言わないとダメだって、ぼく昔から言ってるでしょ！」
…何も言い返せない。
わかっている。わかっているけど、どうにもあの鋭い言葉が怖いのだ。
ぐっと唇を噛むと、スングァンはまたかとでも言いたげにポケットからハンカチを取り出した。
「ほらもー、泣かないでよ〜」
「…泣いてないもん」
「泣いてるじゃんか」
スングァンが机に身を乗り出し、私の瞼にハンカチを添え、少し強引に雫を拭う。
この光景、昔から変わらないよな、なんて呑気に考える頭の中とは裏腹に、私自身は「う〜…」と声まで出して子供のように泣きじゃくる始末。
「あ〜ほんと」と面倒くさそうにしつつも、ボロボロ溢れる涙を拭いてくれるスングァンは、まるでお母さんだ。
「泣いたら負けだよ、Aちゃん。ほら泣かないの」
大人でしょ、と付け加えられたその言葉に、私はまた涙を零すのだった。
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ミラルカ(プロフ) - レンさん» コメント、ありがとうございます！わ〜よかったです！！ホッとしました 笑。後編も楽しんでいただけるように頑張りますね！ (2019年11月26日 0時) (
レス) id: 0059877645 (このIDを非表示/違反報告)
レン(プロフ) - じゅんぴの敬語、言われるまで気付きませんでした〜笑笑 この作品すごく好きなので続きが楽しみです！ (2019年11月25日 21時) (レス) id: 7ddd2a9a14 (このIDを非表示/違反報告)
ミラルカ(プロフ) - satoetu61さん» コメント、ありがとうございます！この二人が一緒にいる作品、なかなかないですもんね…意外な組み合わせかなぁと思っていたのですが、こうして喜んでくださる方がいて安心しました！後編もよろしくお願いします〜！ (2019年11月24日 23時) (レス) id: 0059877645 (このIDを非表示/違反報告)
satoetu61(プロフ) - 楽しみに読ませて頂いています。私の3人の推しの中の,2人スングァン、ジュンが出てくるので嬉しくて。2を楽しみにしています。 (2019年11月24日 23時) (レス) id: 02f0e3e684 (このIDを非表示/違反報告)
ミラルカ(プロフ) - ねこ娘さん» バ、バレておりましたか！鋭いですね…さすがです！(笑)主人公ちゃんがどのような答えを出すのかは、後編までのお楽しみということで…お待ちくださいませ〜〜！ (2019年11月24日 19時) (レス) id: 0059877645 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミラルカ
| 作成日時：2019年10月18日 22時
