12『そんなに』 ページ12
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「あ、ジュンフィさん、これ…」
私が鞄の中を探っていると、「ん?」と口角を上げつつ小首を傾げるジュンフィさん。
書類の中に紛れてようやく目当てのものを見つけ、昼にスングァンに見せたのと同じようにして彼の前に差し出した。
「これ、この前ここに寄った帰りに買ったんです。ジュンフィさんの花言葉のお話がとっても面白くて…」
それを見た瞬間、パッと目を開いて「あ!」と驚きの声を漏らしたジュンフィさんは、私の手から本を取り、まじまじと表紙を見つめている。
「これ、僕も持ってる!」
「え、本当ですか!?」
今度は私が目を開く番だった。
そんな私に、ジュンフィさんは微笑みながら「うん」と頷くと、私の手にその本を返す。
「今も上に」
「上…?」
「はい。僕たち、ここの二階に住んでるんです。二人で」
“二人”というのは、ジュンフィさんと、あと一人は言わずもがなレジカウンターにいる黒髪の彼のことで。
そちらに目をやると、相変わらずつまらなさそうに壁にもたれながら、ジト目でこちらを伺っていて、目が会うや否やふいと明らかに逸らされた。
そういえばと、この前のここでの自分の失態を思い出し、思わず彼に声をかける。
「あの…」
口を噤んだまま、ジロリと睨むように私の方を見やる彼に怖気付きながらも、私は何とか謝罪の言葉を口にした。
「先日はすみませんでした…貴方のお名前を聞きそびれてしまって…」
そう。私はあの時、あろうことかジュンフィさんにだけ名前を尋ね、その場にいたはずの彼には興味を向けなかったのだ。
家に帰って「しまった」と絶句した頃には、もう遅かった。
当然、彼も私に腹をたてるはずである。
「よかったら、お名前を…」
「なんでアンタに教えなきゃいけないわけ」
彼の口からは、私の予想とは裏腹にふわふわした声が発せられた。
しかしその言葉は、声に似合わず鋭く、私を突き刺すには十分で。
私は思わず、ぽかんと口を開けたまま静止してしまった。
「あ、こらミンハオ!お客さんになんてこと言うの!」
「俺、明日早いしもう寝るから」
“ミンハオ” と呼ばれたその人は、悪びれるそぶりもなく、つんと私たちに背を向け、カウンター奥にある階段をスタスタと上がっていった。
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ミラルカ(プロフ) - レンさん» コメント、ありがとうございます!わ〜よかったです!!ホッとしました 笑。後編も楽しんでいただけるように頑張りますね! (2019年11月26日 0時) (レス) id: 0059877645 (このIDを非表示/違反報告)
レン(プロフ) - じゅんぴの敬語、言われるまで気付きませんでした〜笑笑 この作品すごく好きなので続きが楽しみです! (2019年11月25日 21時) (レス) id: 7ddd2a9a14 (このIDを非表示/違反報告)
ミラルカ(プロフ) - satoetu61さん» コメント、ありがとうございます!この二人が一緒にいる作品、なかなかないですもんね…意外な組み合わせかなぁと思っていたのですが、こうして喜んでくださる方がいて安心しました!後編もよろしくお願いします〜! (2019年11月24日 23時) (レス) id: 0059877645 (このIDを非表示/違反報告)
satoetu61(プロフ) - 楽しみに読ませて頂いています。私の3人の推しの中の,2人スングァン、ジュンが出てくるので嬉しくて。2を楽しみにしています。 (2019年11月24日 23時) (レス) id: 02f0e3e684 (このIDを非表示/違反報告)
ミラルカ(プロフ) - ねこ娘さん» バ、バレておりましたか!鋭いですね…さすがです!(笑)主人公ちゃんがどのような答えを出すのかは、後編までのお楽しみということで…お待ちくださいませ〜〜! (2019年11月24日 19時) (レス) id: 0059877645 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミラルカ | 作成日時:2019年10月18日 22時