―彼岸花の咲く黄昏時に― (ページ17)

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第十六章夜明けページ17

ナナシは僕に触れずに僕を庇い白い手に捕まる。これは神様に詳しくない僕でも祓穢神様だと分かった。捕まったナナシの体は徐々に黒くなっていったり、体が透けたりまるで白い手と葛藤しているかの様だった。

(僕には何も出来ないのか・・・)

『何があっても俺には触るな』

そう言ったナナシの声が頭の中で響いた。

(何があっても・・・か。なにも知らなかったとはいえこうなったのは僕の責任でもある。それをナナシ一人が全て背負うのは筋が違う。僕には何も出来ないけど、今にも消えそうな人が目の前にいるのに何もしないなんて出来ない！)

僕は咄嗟にナナシの腕を掴んだ。するとナナシは顔色を変え、恐怖に歪んだ様に真っ青な顔をした。布のせいで顔は見えないけどそんな感じがしたのだ。

「バカ！俺の手を放せ渚！」

ナナシの腕を掴んだ僕の手は徐々に黒に染まっていく。この感覚は穢れを取り込む時と同じ感覚だった。

「うん。僕バカだからさ。これぐらいしかナナシを助ける方法が思いつかなかった」

「助けるって・・・俺はもう・・・！」

その時開いていた本殿の扉から太陽の光が入ってくる。いつの間にか夜明けだ。何だか夜が明けるのが随分早く感じた。薄れていく視界の中、ナナシが僕の名前を呼ぶ声がした。

「渚・・・！」

その言葉を最後に僕の意識はそこで途切れた。二度と・・・

ナナシと会うことは無いとも知らずに―・・・