53 JN ページ3
欲望に身を任せ軽くAの唇に自分の唇を重ね
ほんの少しだけど全身が高鳴るのがわかった
唇が離れてAと目が合うけど
Aは大きな瞳で俺を捉えたまま時が止まってるかのように何も発さない
「ドキドキした？」
気付けば素直な気持ちが口をついていた
ドキドキして欲しい
唇を重ねる事によって少しでも友達から友達以上に認識して貰えるきっかけになるのなら……
長年築き上げてきた2人の関係をここで壊してしまうのも怖かったけど
それ以上にもう心はAを求めてる事に気付いた
固まったまま何も返事をしないAだけど
段々と今まで見た事ない艶っぽい女の顔に変わっていくのがわかった
そう…………
ずっとこの表情が見たかった
ずっとこんな顔をして欲しかった
俺だけのために
「嫌……じゃない？逃げないの？」
この瞬間Aが自分を男として意識してくれたんだと思って
もっとこの顔の先を
まだ知らない彼女の部分を求めてもう一度深く口付けした
Aは抵抗して顔を横に背けようとすれば頬に添えてた手を後頭部に回して唇が離れないようにし
両手で肩を押して離れようとすればきつく抱きしめて2人の距離がより密接するようにした
『まっ………て…………ジ……』
Aの口が開いたのと同時に隙間へ舌を滑り込ませ彼女の甘い口内を堪能する
ウィスキーのほのかな香りが互いの吐息と共に交わって
柔らかい舌が脳内を痺れさせるようだった
甘い蜜が交わり彼女の唇をペロっと舐め掬い
Aを見た瞬間……
喜びと共に罪悪感なのか何なのか……
味わった事のない感情が心に染みを落とした感覚になりギュッと強く抱きしめていた
まだ自分の気持ちすら伝えてないのに
恋人になった訳でもないのに
自分の欲望だけをぶつける様に唇を重ねて良かったのか？？？
唇が離れて冷静になればなる程
築き上げた関係が壊れる恐ろしさ
嫌われてしまうかも知れない恐怖
言い表せない恐怖の渦が心を取り巻いて行った
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作者名：紫音 | 作成日時：2020年7月3日 14時
