音無き毒花秘密裏に 参【我妻善逸】

第百二話 ページ8

＊





突然、上弦の壱が咆哮した。





瞬きもする間もなく、私たちは上弦の刃によって斬り飛ばされた。





『あぐッッ…！！！』





左目を斬りつけられた。





大丈夫、失明する前に目を閉じた。





見える。まだ、見え＿＿＿





『……は…』





身体から無数の刃を出す上弦の傍に、上半身と下半身が分裂した無一郎。





その先には、一刀両断された玄弥が。





それを見た私は、スーッと何かに私の身体を乗っ取られるような感覚に襲われた。





この感じ、遊郭の時と同じだ。





全てが遅く見えて、頭の中が透き通る。





次、誰が何をするのか…





越えてはいけない一線を越えているんだろう。





私を見て実弥と悲鳴嶼さんが何かを叫んでる。





ごめんね。何にも聞こえないんだ。





毒の呼吸_捌ノ型 君影草・夜叉





息を吐くように出たその声と同時に、上弦の頚が飛んだ。





藤「麻友」





『…藤の宮？』





藤「まだ死んではならぬ。」





『死…』





藤「黒死牟…巌勝の事は私に任せ、呼吸をしろ。そのままでは死ぬぞ。」





『こ、きゅう…』





この場に居るはずのない藤の宮が私の前に現れ、私の肺を指でついた。





その瞬間、一気に流れ込む音、動き出す時。





叫んでいるのは、誰？





あれ、上弦の壱は？





どこにも、いない。





悲「麻友ッッ！！！！」





悲鳴嶼さん？





実「やめろッ、もう、やめろッッ、もう、泣くなッッ！！！！！」





泣く…？





あぁ…この叫び声……





私だ。





『ッﾋｭ……ッ…』





全身から力が抜ける。





実「麻友…ッ…！！」





崩れ落ちる私を実弥が抱き留める。





悲「息をしろッ！！！！」





『がッ……ゔッ…』





口から血が吹き出して、声が出ない。





どんだけ叫んだんだよ、どんだけ、暴れたんだ、





肺が破裂してしまう。





実「ッばか、やろうッ……お前まで、ッ…お前まで失うのなんか、死んでもごめんだッ…！！」





『…ふッ……む、い"……ろ……げッ……や……ッ…』





二人は……二人、は……ッ…





見なくたって分かる。





私がこんなになってるんだ。





実弥の目から、涙が零れて落ちてきてるんだ。





また、また私の手から命が零れ落ちていった。





『…ッ…は、ッぅッ……ぁッッ』





必死に空気を貪りながら、私は涙を流した。





みんな、私の前から消えていく、





もう、嫌だ……





しばらく声無く泣き続ける私を、実弥は黙って抱きしめてくれていた。

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