第百十五話 ページ21
*
『善逸…起きて』
善「んん…麻友〜…」
寝ぼけ眼で私の腰に抱きついてくる善逸の頭を撫でる。
あれから三ヶ月の月日が経った。
蝶屋敷の庭の桜が満開だ。
『……』
善「…麻友」
『んー?何?』
善「左目…やっぱり見えない?」
『…そうだねぇ。真っ暗だよ。』
無惨に潰された左目は、鬼化時には見えていたが、鬼化が解けたと同時に元に戻った。
元に戻った、即ち失明。
もう二度と見えない。
善「…。んふふ、それでも相変わらず綺麗だねぇ。そのぼんやりとした瞳も、キラキラ輝いてる瞳も、どっちも素敵だよぉ〜」
両肘を立てて微笑む善逸。
『ふっ…ありがとう』
善「よしよし〜」
私の隣に座り、ぎゅーっと抱きしめてくれる。
陽だまりの匂いがする。
そんな風に、ゆったりとした時間を過ごしていると、コンコンと部屋の戸を叩かれる。
実「仲睦まじいとこ悪ぃな。」
『…!実弥、と…義勇?』
そこに立っていたのは、バツの悪そうな顔した実弥と相変わらず感情が読み取り難い義勇。
善「邪魔すんなよないつもいつも麻友とイチャイチャしてる時に限って__」
善逸が小声でなんか言ってるのはほっといて…
『義勇、髪切ったのね』
冨「ん。もう自分で結えないからな。」
義勇はあの戦いで右腕を失った。
『…似合ってるよ。』
なんて褒めれば、ムフッと嬉しそうに頬を緩めた。
善「なっ!?なぁぁぁに嬉しそうにしちゃってっ!!!麻友は俺の妻なんで勘弁してくれます!?!?」
『善逸うるさい。で、なんの用?二人して来るなんて…』
実「あァ。柱合会議だ。最後のな。」
『……。そっか。じゃあ、行かなきゃね』
善「ちょちょっ、立てる?大丈夫?」
実は私は右足の感覚がもうない。
これは脳を酷使した結果だ。
こうなることは分かっていた。
『大丈夫。実弥、肩貸してもらってもいい?』
実「ん、おらよ。」
私が回しやすいように屈んでくれる実弥。
善「ムキィィィィッ!!!!」
実「いいのかよアレ。」
『相手してたらきりないからいい。ほら、行こ。』
あぁやって嫉妬するけど、この柱合会議の大切さ、私の思入れを理解してるから、善逸はあれ以上何か言ってくることは無い。
この最後の会議が終わったら私たちは……。
屋敷へと向かう私たち三人の顔は、何処か清々しく、悲しみが宿っていた。
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はりぼ(プロフ) - 感動で泣いてしまいました。久々にこんな神作を読ませて貰いました。ありがとうございます。とても感情移入しやすくて本気で号泣してしまいました、、、 (3月4日 1時) (レス) @page27 id: 18e8a9f028 (このIDを非表示/違反報告)
さんさん - とても感動しました! 本当にこういうお話が読みたかったので、嬉しかったです! (2023年5月4日 12時) (レス) @page27 id: 1d25fc6b83 (このIDを非表示/違反報告)
ユリア(プロフ) - お話読ませていただきました!実際にありそうなストーリーでとても引き込まれました。それぞれのキャラクターの気持ちがよく表現されていて面白かったです! (2023年2月10日 19時) (レス) @page27 id: 4dc59746f6 (このIDを非表示/違反報告)
由利 - 凄く感動しました!本当にあったように感じました!(?) (2022年10月3日 22時) (レス) @page27 id: 825b0bc841 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かふぇらて | 作成日時:2022年4月30日 18時