雨と炎は交われない弐【煉獄杏寿郎】 (ページ43)

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第九十話ページ43

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実「折角人間らしくなってきてたのに、なんであんなことになってんだよォッ！！」

杏「それはッ…」

実「テメェが何かしたからに決まって「実弥。その辺にしなさい。」ッ…！！」

しばらくその様子を見ていた産屋敷耀哉に静止され、不死川は煉獄から手を離した。

産「さて…杏寿郎。君はあの子がああなってしまった理由を知っているようだね。話してくれるかな。」

杏「…はい。」

産「ありがとう。と、その前に、そうだな…小芭内、麻友の元へ行ってくれるかな」

小「御意。」

産屋敷耀哉に命じられた伊黒は、すぐさま麻友の元へと向かった。

産「杏寿郎。話してごらん。」

杏「お館様もご存知の、あの双子の兄妹が帰ってきたのです。」

あの双子、と言った時点で産屋敷耀哉の目が変わる。

彼らの危険さは産屋敷耀哉の耳にも入っていたのだ。

杏「…俺と妹の畔倉和は昔恋仲でした。」

煉獄がそう言った瞬間、他の柱たちがざわつく。

不死川に関しては今にも殴りかかりそうで、悲鳴嶼に捕まれてなんとか耐えている状態だ。

杏「しかし、誤解しないで頂きたいのは…好意があったという訳では無いということです。」

産「と、言うと？」

杏「関係を持たないと麻友がどうなるか分からない、そう脅されたのです。麻友が強いことは重々承知しておりますが、男として愛した女性を守りたかった。麻友に何かされたらと思ったら、それを飲むしかなかったのです。」

産「…なるほど。その経緯を知らない麻友は杏寿郎に嘘をつかれていたと勘違いしてしまっているのだね。」

杏「昨日、弁解しようと試みたのですが…もう、その時には…」

産「そうか…。あの子は幼い頃に母を失い、立て続けに父を失ってね。辛いだろうに、まだ九歳という小さな背中で雨辻の名を背負って柱になったのだよ。その頃にはもう、心は壊れてしまっていた。病弱な弟がいたからね。姉として守らなければならないと思ったのだろう。弱音は一切吐かず、泣きもしなかったんだ。でも、そのせいであの子は感情を失ってしまった。」

産屋敷耀哉の話を聞く柱たちは、顔を顰めて俯く。

泣きそうな者もいれば、気づいてやれ無かったことを後悔する者もいた。

産「…あの子がね、杏寿郎を好いていることにずっと気づいていたんだよ。私も、杏寿郎なら麻友を幸せにしてくれると思っていたから、君たちが恋仲になったと聞いて嬉しかったんだ。」