第七十七話 ページ33
*
『…降りると言っても、私の身体の自由がきくまでは続けようと思う。』
杏「うむ。」
『私が、柱を降りたら…煉獄は、…』
杏「俺がどうした」
『煉…獄、はっ……』
我慢していた涙がポロッと零れ落ちる。
煉獄は私を見つめたまま目を逸らさない。
真剣に聞いてくれている。
『煉獄は、っ…!私の元から離れて行ってしまうだろうか…っ…!』
ボロボロと涙を流しながら胸の内を叫ぶ。
柱としてではなく、一人の女として。
母上が仰っていた。
自分自身を失ってはならないと。
これで幻滅されてしまったとしても、これが私だ。
後悔はない。
『っあ…!?』
少しの沈黙の後、突然私の視界が反転する。
目の前には煉獄の顔。
床に組み敷かれて動けない。
杏「誰が誰から離れて行くって?」
『れ、煉獄が…私から離れて行く…と…』
私がそう言えば、煉獄は大きなため息をついた。
杏「今更俺が君から離れて行くと思っているのか?」
『っ…わ、からないだろ…!戦えない私はお荷物なのだから…』
顔を顰めながら目を逸らす。
自分で言って辛くなる。
そうだ、私はお荷物だ。
足でまといに___
杏「俺から目を逸らすんじゃない。」
『…!』
杏「俺は心底君に惚れ込んでいる。君と出会って十二年。ずっと君を追ってきたんだ。やっと手に入れた君を、今更離せるわけが無い」
『煉獄…』
私の頭を撫でながらゆっくりと言葉を紡ぐ。
杏「君が雨将殿の跡を継いで柱になった時、君に追いつこうと努力した。父上に認められたかっただけじゃないんだ。君から離れたくなくて努力をしたんだ。そこを間違えるな。」
知らなかった。
煉獄がこんなことを思っていたなんて。
私だけが追っているものだと…
杏「何度でも言おう。俺は君から離れないし、離す気もさらさらない。言っただろう?麻友と共に生き、共に死ぬと。この言葉に嘘はない。」
『れ、っ…んごくっ…』
ああ、私の愛しい人はなんて暖かいんだろう。
杏「君がどんな選択をしても、ずっと一緒だ。」
『っうわぁぁぁっ…!』
煉獄に抱きしめられながら泣きじゃくる。
好きだ。
心から煉獄との永遠を願う。
杏「愛してる。」
『私も、愛しているよ…』
なんてはにかむと、口付けの雨が降ってきた。
幸せな雨だった。
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真季 - 続編おめでとうございます。引き続き楽しみにお待ちしてます。 (2021年10月7日 23時) (レス) id: ac0ba7e69a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かふぇらて | 作成日時:2021年10月7日 22時