第六十八話 ページ24
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私たちが倒れたことを確認すると、猗窩座は踵をかえして森の中へと逃げていく。
これでは前と同じじゃないか
また、逃げられる。
仇が取れない
『ま"ッ…て…ッ!!』
鞘を杖にして何とか身体を起こす。
これじゃ戦えないことくらい分かってる。
でもこのまま逃がすだなんて…
『ゴフッ…く、ッそ…ッッ』
炭「ッッ!!」
竈門…?
腹を押さえながら竈門が私たちの前を駆けていく。
様子を見ていれば、猗窩座を追いかけているようだった。
森の入り口へ立つと、勢いよく刀を投げ飛ばす。
そして…竈門は叫んだ。
炭「逃げるなァァッ!!」
「『…!!』」
炭「逃げるな卑怯者ッッ!!逃げるなァァッッ!!」
逃げていく猗窩座に向かって叫んでいるのだろう。
自分だって軽傷ではないのに声を張り上げて、
炭「いつだって鬼殺隊はッ…お前らに有利な夜の闇の中で戦ってるんだッ!!!生身の人間がだッ!!傷だって簡単には塞がらないッ!!失った手足が戻ることも無いッ!!!逃げるな馬鹿野郎ッ!!!馬鹿野郎ッッ!!卑怯者ぉぉッ!!」
私と煉獄は寄り添いながら竈門の方に視線を向けている。
炭「お前なんかよりッ煉獄さんや麻友さんの方がずっと凄いんだッ!!凄いんだァッ!!お二人は負けてないッ!!誰も死なせなかったッ!!戦い抜いたッ守り抜いたァッ!!お前の負けだァッ!!煉獄さんと麻友さんの勝ちだァァッ!!!」
大粒の涙をボロボロと流しながら竈門は叫び続ける。
全く…子供みたいに泣いて…
遂には泣き崩れてしまう竈門に、私と煉獄は顔を見合わせて微笑んだ。
杏「もう…そんなに叫ぶんじゃない」
『お前の…気持ちはよく、伝わった……』
私たちの声にゆっくり振り返る。
肩を震わせながら涙を流して…
杏「それに傷が開く…君も軽傷じゃないんだ」
『こっちへおいで』
杏「竈門少年が死んでしまったら、俺たちの負けになってしまうぞ…」
『私たちの…勝ち、なんだろう…?』
炭「煉…獄さんッ…麻友さんッ…」
溢れ続ける涙を拭いながら、私たちの前へと歩いてくる。
『おいで…』
私は腕を広げて、優しく微笑んだ。
そんな私を見て竈門は声を上げて泣き、抱きしめてくる。
『よく…頑張ったな、…』
こんな血塗れで申し訳ないな。
竈門の頭を撫でる私を、煉獄は優しい目で見つめている。
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真季 - 続編おめでとうございます。引き続き楽しみにお待ちしてます。 (2021年10月7日 23時) (レス) id: ac0ba7e69a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かふぇらて | 作成日時:2021年10月7日 22時