第十五話 ページ16
*
ここはどこだろう。
どこを見渡しても紫陽花紫陽花紫陽花。
しとしとと雨が私を濡らす。
わけも分からず、ただ出口を探そうと無闇矢鱈に歩き回る。
誰もいない。
聞こえるのは雨の音だけ。
あぁ、なんて寂しい空間なんだろうか。
『…誰か…いないのか…』
ツンッと鼻の奥が痛む。
「泣くんじゃない。」
『…!!ち、ちうえ…?』
さっきまでいなかった筈なのに、私の目の前に立っているのは確かに父上だ。
これは夢?
それとも、私は死んだのか…
父「お前は死んでいない。今必死にお前の仲間が救おうと動いてくれている。」
『…そ、…うなのですね…』
父上の仇を取れなかった。
それだけで顔向けできないのに、志雨まで危険に晒してしまった。
これでは父上に軽蔑されてしまうな…
父「…よく、頑張ってくれたな。」
『っえ……』
父「狐嫁の時雨も見事なものだった。よく、ここまで完成させたな。流石は我が娘だ。」
私が考えていたこととは裏腹に、父上は優しい笑顔で私の頭を撫でてくれている。
ポロポロと涙が零れ落ちる。
父「全く…お前は昔から泣き虫だな。」
そう呆れながらも涙を拭ってくれる。
父「まだ、お前はこっちに来てはいけない。」
『…はい。分かっております』
父「…これからは、一人で生きていくんだ。」
『…一人…?まさか……』
父上は何も言わない。
私は……守れなかったのか…
父「槇寿郎の杏寿郎くんと言ったか。」
煉獄がどうしたのか…
父「彼ならお前を幸せにしてくれる。信じなさい。」
『………出来ません。』
父「…それは、何故だ」
『私の大切な人は皆、私の傍に居ると先にいなくなってしまう。父上も、母上も…そして、志雨も……。彼まで失ったら、私は情けないことに生きていけません…。』
父「……。今はわからなくても良い。直に分かる。早く戻りなさい。皆が待っている。」
『っ!!』
白い光に包まれて、私は意識を手放した。
***
『っ…ん……』
杏「…!麻友!!」
『…煉獄……』
ここは、蝶屋敷…
私だけ、戻ってきてしまった…
杏「良かった…っ…」
『…!』
私の体に負担をかけないよう、煉獄は優しく包み込む。
杏「胡蝶を呼んでこよう。少し待っていてくれ。」
『…行かないで…』
杏「…!」
今は一人になりたくない。
230人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
真季 - 最新楽しみにお待ちしてます。長くなってすいません汗 (2021年10月4日 7時) (レス) id: ac0ba7e69a (このIDを非表示/違反報告)
真季 - 初めまして。お疲れ様です。最新も早くて楽しみに読み進めて来ました。夢主よ、どうか自分の気持ち正直になって煉獄さんと恋仲になって下さい…!あの鬼殺の男、怪しい匂いが漂ってますね…。彼女に手を出したその時は是非、煉獄さんの赤き炎刀で…! (2021年10月4日 7時) (レス) id: ac0ba7e69a (このIDを非表示/違反報告)
冴凪(プロフ) - とても面白いです!話のテンポも良くてワクワクしながら読みました!更新ファイトです! (2021年9月30日 22時) (レス) @page12 id: 8d3f590c11 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:かふぇらて | 作成日時:2021年9月29日 1時