一歩前進2 ページ7
「迷惑とか…だったかな?」
ぎこちなく伏し目がちに問うが、彼は座っている彼女に目線を合わせるため、少し背を屈み口を開いた。
「いえ、迷惑なんてとんでもありません。むしろとても嬉しいです、こんな暗くなるまで待っていただけるとは思っておりませんでした。」
そう言う彼のレンズの奥の瞳は優しく笑っていた。
恥ずかしくて赤くなっていく頬が彼の手を通して温度が伝わってしまう。
「あの!柳生くんLINE見てくれた、かな!」
このままだと自分がどうにかなってしまいそうで、バッと席を立った。
「もちろん、返信しましたよ。Aさんはきっとお眠りになっていたので気がついていないかもしれませんが」
「えっ、そうだったの?ごめんなさい!私ってば…今返信を…」
急いで制服のポケットに入っているスマホを取り出そうとした瞬間に、スマホを持った手を柳生に止められてしまった。
掴んでいる手は同い年だと言うのに自分よりも大きく、骨張っていて男性的な手だった。自分より強い力を持ったその手で掴まれた腕は動かず、こんな状況にも胸が高鳴ってしまう自分がいる。
「あの、柳生くん……?」
少し黙っていた柳生は立ち上がり口を開いた。
「一緒に家で映画を見る、と言うのは…Aさんのお家にお邪魔するという事でしょうか?こんな時間から私が行くのは何かと迷惑なのでは…」
「そんな事ないよ!柳生くんは恋人なんだから……もっとカップルらしいこと、したい、です…」
恥ずかしすぎてAも敬語になってしまった。
そのまま2人とも押し黙っていた状態で、全員下校の予鈴が鳴り、ぎこちない雰囲気でAは帰る支度をし、一緒に帰路についた。
歩いている最中、Aは柳生に今日の部活の事など、少し気まずくはあったが聞いていた。他愛もない話をしている中で、車道側を歩く彼は、歩く振動で眼鏡がズレてしまい右手で直し、振り下げた手がAの手とぶつかってしまった。
「すみません、ぶつかってしまいました」
「大丈夫…」
こんな時にさっき腕を掴まれたことを思い出して顔が赤くなってしまった。そんな事を考えていると彼はこちらを向き口を開いた。
「手を繋いでも宜しいですか?」
彼から言われると思っておらずAは顔を少し俯けに言い放った。
「い!いちいち聞かれちゃうと、その恥ずかしいから…あんまり聞かないで貰えると、助かりま、っ///」
そういい切る前に、彼は空いている右手で彼女の左手の指と自分の指を絡め固く結んだ。
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作者名:楽天 | 作成日時:2022年3月2日 1時