9. 日 ページ9
ぼやけていく視界に、消えていく世界。
まるで夢から覚めるように、それははっきりと目の前の景色を写した。
白い、天井。
見覚えのある顔が心配そうで嬉しそうな顔をしていた。
視界に入ったカレンダーを見れば、俺が夢宮と帰ったあの日から4日。4日も経っていた。
｢轟くん！目が覚めたんだね！｣
覚醒しない脳を体と一緒に無理やり起こした。
ここは、病院だろうか。
そうだ、夢宮は。
｢ゆ、夢宮は？Aは！？｣
あの姿を探すように緑谷に問いかけた。
待って待って、と戸惑う緑谷。
そこに、俺の担当らしき先生が駆けつけた。
俺の家族も、いた。
そんなの、今はどうでもいい。
戻ってきた痛みがそんなことを俺の体に告げる。
俺の体を検査しようと優しい声とともに手を伸ばしてきた病院の先生を申し訳ないが払い除けて自分の病室から飛び出た。
俺の名前を叫ぶ親父を無視して。
いない。
一つずつ、病室を見て回るけど、ずっと夢の中で隣にいたあの姿は、ない。
頭と、背中と、腕が痛い。
事故で負った、傷。
感じることのなかった痛みがなぜかものすごく虚しい。
最後の病室、息を切らしながらドアを開けた。
からっぽのベッドに、ぽつりと落ちていた水色のシュシュ。
あいつがつけていた、シュシュ。
思わず、ベッドに近づいてシュシュを手に取った。
｢轟くん？…目、覚めたんだね｣
後ろから、あの声。
振り向こうとすれば、お願い振り向かないで、と背中を手で抑えられた。気がした。
少しだけでも見ようと、足元から見れば、透けている、俺とは違う足。
私の話、聞いてと。
｢ごめんね轟くん。私のせいで、こんなめに合わせちゃったね。起きて、轟くんと顔、合わせたかったけど無理みたいだよ。個性使いすぎちゃった。これだけ言わせて轟くん。
轟くんは、私のヒーローだよ。｣
背中から、感触が無くなる。
はっ、と振り返ってもいない。
何回気づけば、いいんだろう俺は。
夢宮はもういない。
俺のせいで消えたのだ。
憎まないでと言われても、この十字架だけは消えない。
涙が、溢れる。
力がぬけて、膝から崩れ落ちた。
もう、夢宮は戻ってはこないと、確信してしまったのだ。
これだけ、言わせてくれないか。
なぁ、A。
もう、ヒーローにはなれない。
こんなの、ヒーローなんて言わない。
だけど、あの時Aを救った時だけは
｢俺、ヒーローになれたよ｣
ーFinー
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緋色 - 他の読んだことのない作品、全て読ませていただきました。切なく美しいオチの作品ばかりで思わず涙腺緩みました…これからも頑張ってください！！ (2018年10月5日 22時) (
レス) id: 04ecd32bcd (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - 緋色さん» ありがとうございます！！来世で結ばれますように！！ファンなんて…！！！感謝感激です！！よろしければ他の作品も読んでみてくださいね！ (2018年10月5日 11時) (レス) id: e7a720d445 (このIDを非表示/違反報告)
緋色 - こんなに素晴らしい作品をありがとうございます…夢主と轟くんが来世で結ばれることを祈っています！これからも頑張ってください！！大大大ファンになっちゃいました…これからもにゃんさんの作品を楽しみにしています！！！これからも頑張ってください！！！ (2018年10月4日 23時) (レス) id: 04ecd32bcd (このIDを非表示/違反報告)
緋色 - 分かりやすく説明してくださりありがとうございます！意味が分かりました！切ない話ですね…夢主は自分の身を犠牲にしてまで轟くんを助けたかったんですね…意味わかった瞬間泣いちゃいました…占ツクでこんなに泣いたの初めてです… (2018年10月4日 23時) (レス) id: 04ecd32bcd (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - なれた。好きな人を、轟くんを守ったヒーローになれたと、伝えました。。こんなところでしょうか。知りたいところが違ったらすみません！また教えていただけたら説明いたします！ファンだなんて！！ありがとうございます！！ (2018年10月4日 22時) (レス) id: e7a720d445 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：にゃん | 作成日時：2017年6月23日 20時
