2. き ページ2
ある教室でのこと。
俺と同じヒーロー科であるAは、1人教室で本を読んでいた。
本のタイトルは簡単に死ねる方法。なんて馬鹿げたタイトルで、俺には微塵も理解できないのだが。
｢あ、おはよう｣
近くに行けばちゃんと気づいてはくれるが、その手にはまたカッター。
あのねこの動脈を切ったら血が、なんて興奮気味にしているが、全く興味はない。
教室でそんなことをしないでくれとカッターを取り上げた。
あっ、なんて声を出すが知らないふり。
一度、Aの家にお邪魔した時がある。
部屋は、綺麗でなんともなく、俺が予想していたような首を吊る縄などの自分で死ぬ道具なんてなかった。
｢轟く、焦凍、手、切れた｣
｢え、あ、ほんとだ｣
気づかなかった。
Aから取り上げたカッターが俺の指に一筋の線を描いていた。ぽたぽたと赤い血が滴り落ちる。
痛くない？大丈夫？とハンカチで俺の手を拭いてくれるA。
痛くないと大人しく手を拭かれていた。
あれ、なんで痛くない？
｢痛くない…なんでだ？｣
｢えっ、あぁ、こっそり個性使っちゃった。私ね、少しだけど他人の傷も治せちゃうんだ。秘密だよ｣
妙にそわそわしているA。
疑いこそはしないが、また、違和感を覚えた。
その違和感を取り去ろうと、Aを呼びかけたその時、チャイムがなってと呼びかけることはできなかった。
Aのお陰で塞がった傷。最後に見たのは少しだけ傷跡が残っていたのだが、今はしっかりと消えていた。
今日も一緒に帰ろうね、と口パクで俺にそう言うAが見える。
*
いつもとは違う人通りの少ない場所を選んで帰った俺らは、手は繋がなかったが繋がりそうな距離で隣並んで歩いていた。
……嫌な予感がする。
そう思ったすぐだった。嬉しそうに歩くAが少し車道の方によろめいた。
｢……ぁっ？｣
｢まてA……っ！？｣
来ていたのだ。車が。
Aを咄嗟に掴もうと、手を伸ばす。怪我をしても元通りというのに手を伸ばす。
少しだけ触れた。その時には倒れるってくらいに傾いて、車が近くにあって。
どんっ、なんて軽い音じゃなかった。
普通なら死んでるだろってくらいの音と衝撃に目が離せなかった。
運転手がハンドルにデコを付けているのが微かにわかる黒煙の中、Aを探す。
馬鹿。馬鹿じゃないのか。
これじゃあ俺がAを押して車道に向けて押したみたいになるって。
俺がAを殺したみたいだって。
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緋色 - 他の読んだことのない作品、全て読ませていただきました。切なく美しいオチの作品ばかりで思わず涙腺緩みました…これからも頑張ってください！！ (2018年10月5日 22時) (
レス) id: 04ecd32bcd (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - 緋色さん» ありがとうございます！！来世で結ばれますように！！ファンなんて…！！！感謝感激です！！よろしければ他の作品も読んでみてくださいね！ (2018年10月5日 11時) (レス) id: e7a720d445 (このIDを非表示/違反報告)
緋色 - こんなに素晴らしい作品をありがとうございます…夢主と轟くんが来世で結ばれることを祈っています！これからも頑張ってください！！大大大ファンになっちゃいました…これからもにゃんさんの作品を楽しみにしています！！！これからも頑張ってください！！！ (2018年10月4日 23時) (レス) id: 04ecd32bcd (このIDを非表示/違反報告)
緋色 - 分かりやすく説明してくださりありがとうございます！意味が分かりました！切ない話ですね…夢主は自分の身を犠牲にしてまで轟くんを助けたかったんですね…意味わかった瞬間泣いちゃいました…占ツクでこんなに泣いたの初めてです… (2018年10月4日 23時) (レス) id: 04ecd32bcd (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - なれた。好きな人を、轟くんを守ったヒーローになれたと、伝えました。。こんなところでしょうか。知りたいところが違ったらすみません！また教えていただけたら説明いたします！ファンだなんて！！ありがとうございます！！ (2018年10月4日 22時) (レス) id: e7a720d445 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：にゃん | 作成日時：2017年6月23日 20時
