人殺しと呼ばれたアメリカ帰りの天才を優秀と野犬は好きになる MIU404 パート2 (ページ19)

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〜志摩〜

香坂｢これ、志摩さんが好きなやつ。事件解決したら乾杯しようって約束しましたよね｣

夜の屋上でグラスにウイスキーが注がれる

香坂｢俺はもう刑事じゃなくなっちゃったけど。刑事じゃ……｣

大きな涙は流さないが、確かに香坂は泣いていた

志摩｢香坂｣

何と言えばいい？

何を言ってやればいい？

志摩｢刑事じゃなくてもお前の人生は終わらない｣

差し出した手に、香坂は俺を見た

それが夢だと分かったのはすぐ

呼び鈴が鳴って業者が声をかける

業者｢水回りのチャンプでーす｣

志摩｢俺、行きます。ここにいて下さい｣

羽野さんと業者を会わせるわけにはいかない

そのために来たんだ

青と白のツナギを着た男が一人

家の裏手にある給湯器を手際良く直していく

ゆたか｢お風呂直ったら一緒に入ろうぜ｣

志摩｢お風呂直ったらな。あっ、ダメダメ。この家の風呂はマズいだろ｣

ゆたか｢何で何で何で何で何で｣

志摩｢何でも何でも何でも｣

外が終わったら次は中も点検する

羽野さんには姿が見られないよう別室で待機してもらう

また伊吹から電話

志摩《何だ》

伊吹《事故だった。香坂の手紙も読んだ》

そこまで辿り着いたのか

伊吹だけの力とは思えないけどな

志摩《ほんとに調べたのか》

伊吹《あったりめぇよ。俺は有言実行の藍ちゃんなんだよ〜。でも、1個だけ分かんなくってさ。なぁ志摩。生きてる香坂に会ったのはいつ？志摩はそんとき、何て声かけたの？調べてもそこは分かんなかった》

志摩《降参か？》

伊吹《降〜参。教えて》

志摩《最後は……アイツが肩を落としてあの手紙を書いてたとき。それからあのビルの屋上》

伊吹《あの夜。屋上行ったの？》

志摩《行かなかった。俺はどっちにも行かなかった。チャンスはあった。何度も……。だけど声をかけなかった》

いつの間にか帰ったアイツからメールが届いていた

俺の好きな酒を買って、屋上で飲もうって内容だった

志摩《こっちは始末書書いてんのにふざけんな。何が飲もうだ。無視した。あれから何度も、何度も何度も何度も何度も何度も！頭ん中で繰り返す。あのとき声かけていたら、あのとき屋上に行っていたら、あのとき電話かけてたら、もっと前、俺がアイツの異変に気付いていたら。スイッチはもう、いくらでもあった。だけど現実の俺は全部見過ごした。見ないフリした》

俺が最後にアイツにかけた言葉は

志摩｢進退は自分で決めろ｣