続・妄想短編集【ジョーカー・ゲーム】

さくみよ：再会６ ページ43

俺がそこへ辿りつくと、

反対側から他の誰かも歩いてきたようだった。



おれは、それをみて、なきそうになった。



頬が濡れた。泣きそうなんじゃなくて、もう泣いているんだと、気付いた。


自然と笑みが零れた。

ぼやけた視界をはっきりさせようと何回も瞬きをして前を見ると、

俺の前の誰かも泣いているようだった。



透き通った白い肌に、男のくせに紅を引いたように赤い、薄い唇の、

酷く整った顔立ちの男だった。




俺はこいつを知っていた。

知っている。

会った事はないけれど。


俺の心の、一番奥の、一番下に、埋もれて。


それでも。





「……佐久間さん」





夢のフラッシュバックとかぶって、目の前の男が声を発した。





「三好」





あの時と同じ様に、俺も返事をした。


そのまま三好は俺の胸に飛び込んできた。





「さくまさん、さくまさん……っ！！

　会いたかった！！ずっと！！あの日だって本当は……！！」


「ああ、俺もだ。

　あの時、俺はお前を抱きしめられたらどんなにいいかと思いながらも、

　それは叶わない時代だった。

　でも」




俺の胸板で顔を隠したままの三好が言う。



「今度は、一緒に飲みに行ってくれますか」



そういえば、結局昔は最後の最後まで飲みに行ってやれなかったんだった。




「……もちろん」




三好が顔を上げた。

昔では考えられないような、人間らしい、顔をしていた。



そのまま俺たちは笑った。

お互い本心を隠すしかなかったあの日の分まで。



散る桜の花びらは、死ではなく、生を表すものへと姿を変えていた。




fin.





【おまけ】

田崎も佐久間を呼び戻す口実で散歩に出ていた。

「あ、田崎」

「……あ、神永」

呆気ないやりとりになってしまったのは、

衝撃が大きすぎて他の何の感情も入り込んでこなかったからだ。

そしてさくみよたざかみですよ。

続かない。



＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
裏設定：結城中佐と有崎さんが全部仕組んでて、
　 これぜんぶ二人の掌の上だったらいいなっていう妄想

さくみよではない：アオモジ→←さくみよ：再会５

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す