軍属傭兵、頑張ります！？

守る、護る ページ35

「……お前は賢く、強く、美しく――それでいて、酷く怖がりな人間なのだな」


しばらくして降ってきた声に、咄嗟に目に溜まった涙を振り払うように顔を上げれば、仕方なさそうに、そして慈しむように視線を向ける閣下。


「自分が存在してしまうことで起こる危機を予測することができ、それを防ぐために最善となる行動をとる。それが例え、自分を犠牲にするかの様な選択だとしてもだ。……自己犠牲は、あまり好まないはずだったんだがな」


「わ、たしは、」


そんな出来た人間じゃありません。そう言おうとしたのに、込み上げてくるいろんな感情が邪魔をする。


「変化の下りだってそうだ。戦争でのし上がってきた武力国家がそんなやわな連中ではないことくらい、聡明なお前なら分かるだろうに」


お前１人引き入れたところで、大した変化は起きんぞという閣下の言葉に目を瞬かせる。


「あとお前は自分の力を過小評価しすぎだ。『守る』に大も小も無い。今まで培ってきたものは、必ずお前の力になっているはずなのだから」


そんなことを、柔らかく言葉にしてもらったのは初めてで。
瞳から、涙が１粒転がり落ちた。


「守るべきものが無いと言うならば、与えてやろう。そうだな……ここに住む全ての国民の安全と笑顔、それから……」



*

守る、護る→←守る、護る

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す