Prolog ページ3
「……終いか、な」
そこからは、いつも通りだった。迫り来る敵を斬って斬って斬って、紫の軍勢が襲ってこなくなるまで斬り伏せ続けた。何人か逃げたのが視界の端に写ったが……今回は仕事で全滅が義務付けられている訳ではない。放っておいても構わないだろう。
チン、と刃を鞘に収め、くるりと背を向け歩き出す。
多少の報復にしてはやりすぎた感が否めないが、やってしまったものはしょうがない。エレネルスの人間は運が悪かったのだ、とでも思ってもらわねば。
「ま、待たんかい!」
ザザザと慌ただしく立ち上がる音が背後から聞こえるが、無視。もう自分の『仕事』は終わったのだ。
くるりと振り返れば、険しい顔で武器を構える男。……終いだ、って言ったのに。
空色の瞳に宿るのは揺るぎない決意。最悪相打ちでも、刺し違えてでもって、思ってる。次は自分だ、とでも思っているのだろうか。じゃあなんで呼び止めたりしたんだか。
…心外だ。多少なりとも、助太刀をしたつもりでいたのに。
はぁぁぁぁっと深い溜息をつけば、ビクリと体を震わせる男……だから手なんて出さないってば。
「……あんた、我々国の軍人でしょ?」
「……やったら、なんやねん」
「そんな怖い顔しないでよ、何もしないってば。……だったらね、これも何かの縁。1つ、お土産を持たせてあげる」
「はぁ……?」
「――この戦、あんた達の勝ちだよ」
「………………は、」
「早くお仲間の所に戻って、伝えた方がいいんじゃない?……じゃあね」
呆けた顔にとびきりの微笑みを1つ。
信じるかな?上から見てたところ、戦力が集中してたのは金髪さんの周りが一番だった。そこを潰せたのならば、エレネルスがどうあがいてもここから勝利するのは難しいだろう。
……まあ伝えはしたんだし、ここからどうするかは、金髪さん次第。
命拾いしたね。気まぐれに持たせる土産にしては、豪華すぎたかな。
「お前、何者や……!?」
後ろから聞こえる呆然とした声に足を止める。私が一体何者かって?知りたがりだね、金髪さん。
……振り返っては、あげないけど。後ろ手に手を振ってこう答えてあげる。もう滅多に会うことはないだろうしね。
私はね――。
「ただのしがない雇われ傭兵、だよ」
-FIRST CONTACT-
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ゆう - 返信ありがとうございます!そうなんですね!なんかかっこいい…!! (2020年2月10日 7時) (レス) id: 9aa71b1239 (このIDを非表示/違反報告)
悠栞@ゼリー(プロフ) - ゆうさん» 一応「見つけてこい」と「貴方がそれを望むなら」的なことを直訳で言ってもらってます…!翻訳アプリ頼りなので文法的な間違いはおそらくあるかと思われます。゚(゚´▽`゚)゚。 (2020年2月9日 22時) (レス) id: 998f9539b4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - 小さなお返しの最後の方のロシア語って[...夕食でまた]とかの夕食でまたのところを言っているんですか?((伝わらなかったらすみません (2020年2月9日 22時) (レス) id: 9aa71b1239 (このIDを非表示/違反報告)
悠栞@ゼリー(プロフ) - リズム天国さん» ご返信遅くなり大変申し訳ないです……!ありがとうございます! (2019年6月8日 9時) (レス) id: 5f4004635c (このIDを非表示/違反報告)
リズム天国 - 面白い (2019年4月8日 23時) (レス) id: 1e030985a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:悠栞@ゼリー | 作成日時:2018年1月14日 1時