８話 ページ9
晶「まだ理解は追いついてないが、お前相当キツイだろ。
とりあえず、無理せずお前の考えたようにやれ。慌てなくても時間はいくらでも稼いでやる」
ヒースクリフ「賢者様？」
晶「いいからやれ」
ヒースクリフ「！はい！」
返事を聞いてすぐ、俺は近距離にいた三、四人に手刀を入れ気絶させる。
同時に、ヒースクリフは胸元の前に右手を翳した。
ヒースクリフの手が淡い光を帯びていく。
いつの間にか、手のひらの中には、懐中時計が握られていた。
なんっっだ今の！？
と、心の中で驚くが、流石におかしな状況にも慣れてきた。
懐中時計を握りしめて、ヒースクリフが静かに瞼を閉じる。
ヒースクリフ「《レプセヴァイヴルプ・スノス》」
次の瞬間＿＿＿。
兵隊たちは人形のように、動きを止めた。
晶「なっ」
ヒースクリフ「……っ」
晶「！大丈夫か！？」
目の前で起きた光景に俺は息を呑むが、すぐ近くで目眩を起こしたようにヒースクリフがその場に膝をついたことで、我に帰った。
ヒースクリフやカインは限界で戦っていることを思い出す。
ヒースクリフは俺の問いに小さく頷いて、必死に立ち上がった。
ヒースクリフ「……大丈夫です……。急ぎましょう、すぐに魔法は解けてしまう。
急がなきゃ、ファウスト先生が……」
フラつくヒースクリフを見ていられなくなった俺はヒースクリフの前にしゃがむ。
晶「下まで行くんだよな？乗れ、走るのも辛いだろ」
ヒースクリフ「え、でも…」
晶「いいから乗れ」
ヒースクリフ「っ、ありがとうございます」
断ろうとしていたが、再びふらついたことで腹を決めたのか、俺の背に乗ってきた。
それと同時にカインが上から声をかけてくる。
カイン「ヒース、無事か！？」
ヒースクリフ「……っ、大丈夫！」
ヒースクリフはそう返すと申し訳なさそうに言った。
ヒースクリフ「すみません、下までお願いします」
晶「おう！」
人形みてえに固まった兵隊たちの間をぬって、下まで一気に駆け降りていく。
もう少しで、階段の下に、抜けられそうだった時、ぴくりと、兵隊たちの指が揺れた。
ヒースクリフ「……っ、魔法が解ける……」
直後、兵隊たちが、いっせいに動き出す。
兵隊「……っ、賢者を捕まえろ！
あれ？いない？どこに行った！？」
兵隊「馬鹿！おまえの後ろだ！」
兵隊「いつの間に！？逃がすものか……！」
動き始めた兵隊たちが、俺たちを囲い込んだ。
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作者名：ark | 作成日時：2021年8月14日 14時
