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7話 ページ8

だんだん、俺の頭の中では理解が追いつき始めていた。


夢や妄想は、あくまで経験の厚み分しか膨らまない。

つまり、写真すら見たことない空間を、夢の中で作り出すこともできなければ、

見たことのない顔の人物や、聞いたこともない言葉が夢に出てくることもない。


そして俺は戦場育ち、螺旋階段なんて、言葉しか知らねえ。

見たことすらなかったから。

つーか、日本に螺旋階段なんて、ほとんどなかったしな。


つまり、本当に、俺は異世界に来たかもしれねえってことだ。




晶「なあ、聞いてもいいか?」




階段の半ばで、ヒースクリフが肩越しに振り返る。


その時俺は、あることに気づいた。


ヒースクリフは顔色が悪かった。

そういえば、階上で戦っていたカインも、疲労している様子は見えた。




晶「おい、大丈夫か?顔色悪いぞ。

!………っと」




ふいに、ヒースクリフがよろめく。


俺は危うげなくヒースクリフの背を支えた。


額を抑えながら、ヒースクリフは苦しげに肩で息をした。




ヒースクリフ「……すみません……。
もう、ほとんど、魔力が残ってないんです……」


晶「……魔力?」


ヒースクリフ「〈大いなる厄災〉との戦いを、終えたばかりで……。
……カインだって、限界……」


晶「わかった、あんまり喋るな。体力はいつでも浪費するもんだからな」




魔力がどんなもんなのかも、さっきから聞く〈大いなる厄災〉がどんなもんかも知らねえが、ヒースクリフの様子を見れば、疲れ切っているのはわかる。


人間は立っているだけでも、体力を浪費する。

そう思って、気休め程度にヒースクリフの背をさする。


しかし間が悪く、階上からすぐに兵隊が追いかけてきた。




兵隊「逃がすな!捕まえろ!」


ヒースクリフ「…………っ」




ヒースクリフは俺の手を引いて、階段の下に降りようとする。

すると、階下からも人が押し寄せて来る。




兵隊「挟み撃ちだ!これなら逃げられないだろう!」


ヒースクリフ「っ……大丈夫です、賢者様。俺がお守りします」




ヒースクリフの表情からして、何か策があるんだろう。


だが、兵隊たちはもちろん止まらない。

思ったよりも早く追いついてきた兵隊たちを凌ぐには、近接が一番手っ取り早い。


そう判断した俺は、ヒースクリフの手を離し、言った。

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作者名:ark | 作成日時:2021年8月14日 14時

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