６話 手を引く者 ページ7
カイン「相手が俺でもだ。＿＿＿＿＿＿ほら、来いよ」
兵隊「は、はい……っ」
ドラモンド「カイン、何度言えばわかる！
ここにいる兵は、おまえの部下ではない！号令は私が出す！」
めんどくせ。
カイン「細かいな……」
カインも同じ意見だったらしいが、カインのその言葉を聞いたドラモンドは、さらに怒るだけだった。
ドラモンド「おまえが大雑把なんだ！そんなことだから騎士団長の座を追われたりするんだ！」
カイン「わかった、わかった！
なんだっていい。早くしてくれ。
どうぞ、閣下」
ドラモンド「ゴホン……。
ものども、かかれ……！」
兵隊「うおおお……っ」
わあっと兵隊たちが声を上げて、カインに向かって襲いかかる。
乱闘ゆえ、こちらにもちょいちょい剣の切先あたりが掠りそうになるが、俺は元々戦場育ちみたいなもんだし、避けるのは簡単だった。
え、自分は戦わなかったのかって？
立場がわからん以上、下手に手を出すと後が面倒だから、今回は何もしてねえよ。
まあ話は逸れたが、俺は切先を避けながら、カインを凝視していた。
がむしゃらに襲ってくる兵隊たちの剣を、軽々とかわして、余裕で叩き伏せていく。
元副団長というだけある。
他の兵隊とは比べ物にならないくらい、練度が高かった。
俺がカインに感心していたその時、誰かが、控えめに俺の手を引いた。
ひんやりした、冷たい指。
？？？「…………」
基本的に知らないやつを警戒していないといけない世界で育ったからだろうか。
つい癖で弾きそうになるが、その手の主が、カインと共に来た男だとわかると、咄嗟に弾き落とすのをやめた。
なんとなく俺の第六感が、カインたちは悪いやつじゃないと言っている気がして。
晶「えっと……お前は？」
？？？「あ……。
東の国の魔法使い、ヒースクリフです。ついて来てください」
ヒースクリフと名乗ったそいつを見て、世の中にはこんな美形もいるもんなのかと思った。
精巧な細工で形作られた、美術品みてえだ。
まあ、美術鑑賞する機会なんざ、俺の人生にはなかったが。
そんな、まじまじと観察するみてえな俺の視線から逃げるように、ヒースクリフはうつむいた。
ヒースクリフ「こっちへ」
乱闘になった場から逃げ出すように、ヒースクリフの後を追って、薄暗い階段へと向かう。
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作者名：ark | 作成日時：2021年8月14日 14時
