５話 ページ6
手品のように、一瞬で箒を消して、そいつらは俺の両側に立つ。
？？？「おまえの言った通りだな、ヒース。
まさか、魔法管理省のやつらが、賢者をさらいに来るとは」
？？？「言っただろ。
……人間たちは俺たちを信用しない」
俺は驚いて、交互に二人を見やった。
背のでかい、精悍な男の方が、俺を振り返る。
その瞳は左右の色が違った。
？？？「あんたが新しい賢者様か？」
晶「……は」
？？？「俺は中央の国の魔法使いカイン。あんたを守る騎士でもある。
あんたの名前は？」
晶「えと……晶だ……」
あ、やべ、喋っちまった。
そう思ったが、もう遅く、カインと名乗った男は口端を上げて、笑顔を見せた。
カイン「晶様。よろしくな。
まずはこいつらをなんとかしよう」
そう不敵に笑って、腰に下げていた剣を引き抜く。
他の兵隊たちの剣とは段違いの、見事な装飾と、研ぎ澄まされた刃の、立派そうな剣だった。
すげえよく切れそうな剣。
俺がその剣の刃に見惚れていると、兵隊たちの間には動揺が走っていた。
兵隊「か、カイン騎士団長……」
兵隊「カイン騎士団長だ……！」
ドラモンド「ええい、元・騎士団長だ！もうおまえたちの指揮官ではない！
カイン！大臣である私に剣を向けるなど、反逆罪で処罰するぞ！」
カイン「俺だって、老人を脅したくはないさ。
だが、俺たちの賢者様に、妙な真似をするというなら、話は別だ。悪いが、手加減はしないぜ」
カインのその言葉に、兵隊たちは尻込みする。
兵隊「…………っ」
カイン「おいおい、二の足を踏むな。敵の気迫に飲まれるなと教えただろ？
腹を据えて、向かってこい。
相手が俺でもだ。＿＿＿＿＿ほら、来いよ」
どうやら兵隊たちはまだ成長途中らしい。
現在進行形で敵対しているはずのカインに、指導されている。
元騎士団長相手とはいえ、兵隊たちが弱すぎないだろうか？
俺はカインと兵隊たちの会話を聴きながら、一人、情けない兵隊たちが心配になってきていた。
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作者名：ark | 作成日時：2021年8月14日 14時
