４１話 朝ご飯と優しい魔法 ページ42
よくわからねえ食材たちが、透明な瓶に詰められて、棚に並んでいる。
『気持ち昆布』と書かれた、乾燥したよくわからない海藻……。
『気持ち米』と書かれた白い粒……。
『かなり味噌』と書かれた深緑色をしたねばねばしたもの……。
晶「前の賢者、結構苦労してんな……」
まあやるかと鍋を手に取った時、ヒースクリフが駆け込んできた。
ヒースクリフ「賢者様、俺が手伝います」
晶「これくらいなら一人でできるぞ、心配すんな」
ヒースクリフ「いけませんよ。
こう見えても、手先は器用なんで。お手伝いくらいさせて下さい」
腕まくりをしながら、ヒースクリフが笑いかける。
その顔は、昨日の焦った顔とは比べ物にならないくらい綺麗だった。
ただ、ヒースクリフの笑顔はどこかぎこちない。
うちで飼ってたシロが同じような顔をしていたことがあった気がする。
確かまだうちに来たばかりの時、周りの猫たちが俺に近づいて行くのを見て、頑張ってついてきた時だ。
人見知りが、頑張って近づこうとしてるみてえな感じ。
本当は社交的なタイプではないんだろうが、ファウストのこともあって、歩み寄ろうとしてんのかもしれねえ。
俺は、出来るだけ安心させられるように笑いかけた。
晶「ありがとよ。助かる」
ヒースクリフ「いえ。えっと、何を作るんですか？」
晶「……ククッ」
ヒースクリフ「？？賢者様？」
あまりにそわそわしていて、なんだか笑えてきてしまう。
いきなり笑い出した俺を、ヒースクリフは怪訝そうな顔で見つめた。
晶「悪い悪い、ついな。
…ヒースクリフ、お前なりに歩み寄ろうとしてくれてんのは伝わるし嬉しいが、あんまり無理はすんなよ？」
ヒースクリフ「！！」
晶「一緒に過ごしてればそのうち慣れるだろ。別に急ぐ必要はねえンだ。無理しすぎんなよ」
ヒースクリフ「賢者様……。わ、わかりました」
晶「おう。いきなり悪かったな」
それっきり、ヒースクリフは黙った。
せっかく無理して明るくしていた空気を壊して微妙な空気にしちまった責任を取ろうと、俺は明るく話を戻す。
晶「何を作るか、だったな」
ヒースクリフ「あ、はい」
晶「おじやだ」
ヒースクリフ「ああ、前の賢者様が作ってくれたミルク粥みたいなやつだ。だしが肝心なんですよね」
ヒースクリフもおじやを知ってたのか、そう聞いてきた。
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作者名：ark | 作成日時：2021年8月14日 14時
