３１話 ページ32
晶「悪かったな、心配させて。それと慰めようとしてくれたこと、礼を言う」
スノウ「良い、良い。そなたの心が落ち着いたのなら、なによりじゃ」
ホワイト「我らは出会ったばかり。そなたはこの世界に来たばかりじゃ。不安が多いのは当然じゃろう」
晶「そう言ってもらえると、助かる。あ〜それと……」
スノウ「なんじゃ？」
晶「ここまで俺に付き合ってくれたのに悪いんだが…、
俺、もとの世界で猫を飼っててな。そいつらの様子が気になるからいっぺん帰って様子を見て来たいんだ。
そのためにアーサー王子に会いてえんだが……」
そういうと、スノウとホワイトは表情を硬くする。
スノウ「……帰った後、もしもう一度こちらにくることができるとしたら、そなたはどうしたい？」
晶「そうだな……。詳しくは知らねえが、困ってんだろ？もう顔を合わせて話した仲だ。俺にできることがあるなら、いくらでもやってやんよ」
スノウの問いにそう答えると、さっきと一転、二人は安心したように笑った。
スノウ「そうか……。もしそうなれば、何よりじゃな…」
ホワイト「大切な家族なんじゃろう？恋しいのは当然じゃ。
アーサーに会えるように、我らも取り計ろう」
晶「ありがとな」
スノウ「カインに聞いてみるといい。カインはアーサーと同じ中央の国の騎士じゃ」
ホワイト「さすがのカインも疲労困憊で、今夜は眠ってしもうたじゃろうが。明日にでも」
晶「カインか…。わかった」
スノウ「そなたも休むといい。賢者の部屋まで案内しよう」
晶「助かる。そうだ、この本借りていいか？」
立ち上がりながら、そう尋ねる。
ホワイト「賢者の書？もちろん、それは賢者のものじゃ」
晶「そうか」
賢者の本を脇にかかえると、待ってくれていた二人が歩き出した。
そして案内されたのは、2回の真ん中にある部屋。
扉を開けると、緑と茶をメインに使った落ち着いた雰囲気の部屋が目に入った。
スノウ「ここは前の賢者が使っていた部屋じゃ」
ホワイト「まだ散らかっておるが、適当に片付けて、ゆっくり過ごすといい」
晶「ありがとな」
スノウ「おやすみ」
ホワイト「おやすみ」
晶「おやすみ」
その言葉を最後に、バタンと扉が閉じられる。
ひとりになって、部屋を見渡した。
生活感のある、誰かがいた気配が残る部屋だ。
疲れていたから眠れると思ったが、寝転がってもなかなか眠れず、寝台の上で賢者の書を開いた。
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作者名：ark | 作成日時：2021年8月14日 14時
