２話 ページ3
晶「ま、俺は撮らねぇけど」
俺は殺し屋だ。
血の味は知ってても、風流の味はわからん。
晶「ああ、今日がまた終わる」
そう口に出しながら、俺は自分のマンションのエレベーター前までたどりついた。
ボタンを押して、エレベーターを呼んで、開いた扉に乗り込む。
晶「疲れたし、今日は帰ったらまず猫缶やって、猫モフるか」
袋に入った猫缶を確認しながら、そう呟く。
しかし、そこで違和感に気付いた。
晶「ん？なんかうるせえな」
猫缶の入った袋から顔を上げて、俺は目を丸くした。
いつものエレベーターの内装と違う。
ガタ、ゴト、響く音も、聞き慣れねえ音だ。
晶「何でだ？入り間違えたか？それとも疲れで幻覚見ちまってるとか……」
そんなふうにあれこれと可能性を考える。
だが、どれも決定打に欠けている。
まさか、本当に不思議なことが起きるとは……。
迷信じゃなかったのか。
頭をひねって考えていると、どこからか知らない声が聞こえてきた。
？？？「やあ」
晶「…………！？」
俺は目を疑った。
帽子が宙に浮かんで、しかも話かけてくる。
？？？「ようこそ、賢者様。
エレベーターの行き先は、私がご案内いたしましょう。
私は西の魔法使いのムル。
行き先は〈大いなる厄災〉によって、壊れかけた世界。
お会いできて光栄です。愛しい賢者様」
晶「賢者？魔法使い？〈大いなる厄災〉って一体......」
帽子の下に、礼儀正しい紳士が現れた。
こちらの問いには答えず、話を続けていく。
ムル「これから賢者様を、少しばかり、厄介なことに巻き込むかもしれません」
このエレベーターには俺しかいねえし、どうやら、賢者様っつうのは俺のことらしい。
既にだいぶん厄介なことに巻き込まれてるが、まあいいだろう。
ムル「さて、厄介事には色々あります。
色恋沙汰、名誉に戦争、家族、友人、仕返し、恩返し……。
今回は、その中で、もっとも厄介な問題！
世界救済。
あなたにその手伝いをして欲しいのです」
晶「は？？」
あまりにも突然話がぶっ飛ぶから、最初から意味不明だった話がわけわかんなくなって、戸惑う。
次の説明を求めてムルと名乗った男を見ると、ムルはにこりと微笑んだ。
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作者名：ark | 作成日時：2021年8月14日 14時
