百七十二話 たえまなく過去へ押し戻されながら(後編) ページ24
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「(打つ手が無い……。何時かは捕まる。此処から逆転なんて、僕には無理だ!
もう……太宰さん達を頼るしか無い!」
そうして敦は、出口の茶色い扉に向かって走る。
そんな敦の行動に驚いたモンゴメリは、目を見開き叫んだ。
「お友達を捨てて逃げる気!?」
しかし、モンゴメリの声が敦に届くことはなく、敦は扉に近づいていく。
「(この状況でも太宰さんなら、きっと手を思い付く……。でも僕には無理だ!
こんな過酷な場所に、僕が居る資格なんて無かったんだ!)」
敦の手が扉に触る____その時だった。
妙に背筋が伸びシャンとした状態の中年の男が、敦の首にリボンを引っ掛けて引っ張る。
そして、光を映さない瞳で告げた。
「駄目だよ少年。敵はあっちだ」
その言葉の後、引っ張られた反動で後ろに倒れた敦が、グゲ、と変な声を出す。
モンゴメリもポカンとして、間抜けに口を半開きにした。
そして、首にリボンを引っ掛けられたせいで首が閉まったのか、敦がけほっとむせながら男に目を向けると、男は途端に少し前までの気弱な様子に戻り、口を開く。
「この場合での逃亡はお勧めしない。
その……高が街医者の言葉を信じて貰えるならばだが、
彼女の言葉を信じるなら、そのドアから逃げれば君は記憶を失う。敵の手管も捉えられた仲間の危機も忘れ、敵は進撃を続ける。
佳い事を教えよう」
そう言った男は手にリボンを持ち直し、グッと拳を握りながら続けた。
「
二度と反逆されぬよう、此処で徹底的に叩くのだ」
「でも方法が」
「絶対に敗けぬと高を括る敵ほど容易い相手はないよ」
反論しようとする敦を納得させるように、男は被せながら話す。
そして、男は顎に手を当てながら更に続けた。
「抑も____
先程聞いた所では、あの
その言葉を聞いた敦は目を見開くと、そっと後ろにある白い扉を見詰める。
そして男の手からリボンを受け取ると、振り返った。
「(そうだ……皆は僕を。なら今回は)」
「お話は終わり?やる気は戻ったかしら。そうでなくちゃ面白くないわ。
でも終わりよ」
「!」
モンゴメリの声と共に、敦の足元から大きな顔と手が出てくる。
それに反応した敦は、上に飛んだ。
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ark(プロフ) - 瑞樹さん» そう言って貰えて嬉しいです!これからも頑張ります! (2021年4月18日 23時) (レス) id: 875b3ab9f7 (このIDを非表示/違反報告)
瑞樹(プロフ) - 設定も話もめっちゃ好きです!!これからも頑張ってください! (2021年4月18日 22時) (レス) id: 704267e73b (このIDを非表示/違反報告)
ark(プロフ) - 麗さん» 指摘ありがとうございます (2021年4月7日 9時) (レス) id: 875b3ab9f7 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 3ページ 名前変換出来ていないところあります (2021年4月7日 9時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ark | 作成日時:2021年4月5日 10時