百六十四話 たえまなく過去へ押し戻されながら(前編) ページ16
その間にもフィッツジェラルドはお茶を飲みながら話を進める。
「悪くない会社だ。建物の階層が低すぎるのが難だが街並みは美しい。
この会社を買いたい」
フィッツジェラルドは机に置かれたアタッシュケースを開けると、そこに詰められた大量の札束を指しながらそう言った。
福沢はその言葉に目を見開く。
そしてフィッツジェラルドは、右手の人差し指を立てながら、さらに続けた。
「勘違いするな。
俺はここから見える土地と会社すべてを買うことができる。この社屋にも社員にも興味はない。
あるのは一つ」
「____真逆」
「そうだ。【異能開業許可証】をよこせ」
察したように口を開く福沢に、フィッツジェラルドはそう頷く。
地を這うような低い声と重たい殺気に、福沢は表情を厳しくした。
「この国で異能者の集まりが合法的に開業するには、内務省異能特務課が発行した許可証が必要だ。
特務課の石猿どもだけは金で買収できない。なにしろ表向きは
連中を敵に回さず大手を振ってこの街で【捜し物】をするには、その許可証が____」
「断る」
話を最後までさせずそう述べた福沢に、フィッツジェラルドは尚呑気に話を進める。
「そうか?
何ならこの腕時計もつけよう。限定生産で特注ダイヤが___」
腕時計について説明するフィッツジェラルド。
しかし、福沢はそれをも遮った。
「命が金で購えぬ様に、許可証と変え得る物など存在せぬ。あれは社の魂だ。特務課の期待、許可発行に尽力して頂いた、夏目先生の想いが込められて居る。
頭に札束の詰まった成金が、易々と触れて良い代物では無い」
威嚇するようにフィッツジェラルドを睨み、福沢はそう言い切る。
その言葉を聞いたフィッツジェラルドは、福沢を嘲笑うように言った。
「[金で購えないものがある]か。貧乏人の決め台詞だな。
だがいくら君が強がっても、
「御忠告、心に留めよう。帰し給え」
「また来る」
そう言って立ち上がったフィッツジェラルドとその部下に、賢治が声をかける。
「お送りします」
それに従い歩いていくフィッツジェラルドは、最後にバッと福沢の方を振り返ると、口を開いた。
百六十五話 たえまなく過去へ押し戻されながら(前編)→←百六十三話 たえまなく過去へ押し戻されながら(前編)
208人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ark(プロフ) - 瑞樹さん» そう言って貰えて嬉しいです!これからも頑張ります! (2021年4月18日 23時) (レス) id: 875b3ab9f7 (このIDを非表示/違反報告)
瑞樹(プロフ) - 設定も話もめっちゃ好きです!!これからも頑張ってください! (2021年4月18日 22時) (レス) id: 704267e73b (このIDを非表示/違反報告)
ark(プロフ) - 麗さん» 指摘ありがとうございます (2021年4月7日 9時) (レス) id: 875b3ab9f7 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 3ページ 名前変換出来ていないところあります (2021年4月7日 9時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ark | 作成日時:2021年4月5日 10時