九話 人生万事塞翁が虎 ページ10
「あいつ、僕を追って街まで降りてきたんだ!
空腹で頭は朦朧とするし、どこをどう逃げたのか...」
敦の話が途切れると、Aは自分の考えを裏付けるように質問する。
『敦くん、それいつの話?』
「院を出たのが二週間前。
川であいつを見たのが______四日前」
「確かに、虎の被害は二週間前からこっちに集中している。それに、四日前に鶴見川で虎の目撃証言もある」
敦の言葉に継いで言われた国木田の言葉に、太宰とAは考え込んだ。
そして間もなくして、太宰が満面の笑みで敦に指を指す。
「敦君これから暇?」
その言葉を聞いた敦は少しのけぞって、恐る恐る返事をする。
「.........猛烈に嫌な予感がするのですが」
「君が【人食い虎】に狙われてるなら好都合だよね。虎探しを手伝ってくれないかな?」
案の定の言葉に、敦は椅子から立ち上がって即答した。
「い、いい、嫌ですよ!
それってつまり「餌」じゃないですか!誰がそんな」
「報酬出るよ」
が、太宰の誘惑の一言によって、敦が言葉を止める。
そう、現在敦は無一文なのである。
太宰はその敦の様子を見ると、国木田にメモ書きを渡した。
「国木田君は社に戻ってこの紙を社長に」
「おい、二人で捕まえる気か?まずは情報の裏を取って____」
『大丈夫だよ国木田さん、私も行く』
「ほら、Aちゃんもこういってる事だし!
いいから」
国木田はその言葉を聞いて、渋々メモを受け取り、内容を確認する。
その時敦は、報酬のことで頭がいっぱいになっていた。
ついには揉み手をして、太宰に聞く。
「ち、ちなみに報酬はいかほど?」
太宰は少しの間沈黙すると、適当な額を紙に書いて敦に見せた。
「!!!」
『(治くん、これ絶対適当でしょ...)』
Aも共に覗き込んで、げっという顔をするが、どうやら敦には効いたらしい。
結果オーライなので、Aは黙っておくことにしたのだった。
254人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ark | 作成日時:2021年1月4日 18時