四十八話 運命論者の悲み ページ49
同じ頃、とある路地裏_____
そこには、闇に潜んだ広津がタバコを吸いながら壁にもたれていた。
周囲には黒服たちの姿もある。
緊張感のあるその場に、新しくコツコツと音を立てながら数人が入ってきた。
広津はタバコを口から離し、その集団の先頭に立っている男に声をかけた。
「遅い。二分遅刻」
花の頭に絆創膏をつけたその男は、叱責されたにも関わらず、ニッと口角を上げて笑う。
男の後ろには、数人の黒服がザッと並んでいた。
「ジィさんは神経が細かくっていかんね」
《立原道造_____武闘組織【黒蜥蜴】十人長》
立原はそう言って目の前の顔を見回し、広津に問う。
「何だ。陰気臭い銀の野郎も遅刻かよ?」
「もう居る。後ろだ」
立原の問いに対して、広津はタバコを火消しに押し付けながらそう答えた。
その言葉を合図に、立原の背後にヌッと人影が映る。
気配を感じた立原が振り向くと、そこには長い前髪を顔の前に垂らし、後ろの髪を高い位置で結った人影が立っていた。
中性的な顔立ちをしていて、どちらの性別か判別が付きにくい。
《銀_____武闘組織【黒蜥蜴】十人長》
銀のその様子に、立原は舌打ちをする。
「相変わらず鬼魅の悪い男だ。癇に障るぜ」
立原がそう言った次の瞬間、立原の喉元には薄い短刀が向けられていた。
「………」
短刀を握る銀は沈黙したまま立原を睨みつける。
_____銀による不意打ち。
普通ならそう見える。
しかし短刀を向けるために少し空いたその脇口には、立原の持つ拳銃が当てられていた。
「……やんのかよ?」
正に一騎討ち。
一気に緊張の増したその空気の中、一人の人物が声をあげた。
「止めろ愚図ども」
少し怒りを含んだその声に、周りの空気が硬直する。
声の主である広津は、片手に自身の異能力を発動させていた。
「二人とも[襲撃に際し戦士]と報告されたいか?」
《広津柳浪
_____武闘組織【黒蜥蜴】百人長
_____能力名【落椿】》
静かなその言葉に、先程まで殺気立っていた二人さえも背筋を凍らせる。
そして二人は渋々武器をしまった。
「……ちっ、わかったよ」
「………」
「喰えんジーサンだ」
何とか場が収まった時、広津のポケットから、空気を壊すような電子音が響いた。
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作者名:ark | 作成日時:2021年1月4日 18時