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三十五話 ヨコハマ ギヤングスタア パラダヰス(後編) ページ36

絶望する敦に、芥川はいった。




「云っただろう。僕の黒獣は悪食。凡ゆるモノを喰らう。
仮令それが【空間そのもの(・・・・・・)】であっても。
銃弾が飛来し着弾するまでの空間を一部喰い削った(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
槍も炎も、空間が途切れれば僕まで届かぬ道理」

「な………
(そんなの……攻撃の仕様が無いじゃないか!)」




芥川のその言葉に、敦はこのままでは自分が確実に負けると理解した。

だからこそ、何か手をうたなければならない。


しかし芥川は、さらに敦を絶望のどん底へ叩きつけた。




「そして僕、約束は守る」




芥川がそういった次の瞬間、敦の右足を黒獣が喰いちぎった。

一瞬の間を置いて、敦はあまりの痛みに悲鳴をあげる。


敦は痛みに悶えながら、昔のことを思い出していた。


____孤児院での地獄のような日々を。

ずっと見捨てられて生きてきた過去を。




「(それでも僕は_____)」







芥川は抉れた壁や地面を見て、吹き飛ばされ姿が見えなくなった敦の回収を諦め、拠点に帰ろうとした。

しかしそんなとき、芥川の後ろからパキッと小さな音がした。


それに気づいた芥川が振り向いた先に見えたのは、半分虎化した敦が壁に張り付いている姿。


芥川はそれに対し、初めて動揺の色をみせた。




「何ッ……」




敦は、壁に張り付いたまま完全に虎化すると、芥川に襲いかかる。




「そうこなくては」




芥川はそんな敦の様子に歓喜の色を見せ、そう呟く。


そして自身も、敦に対抗するべく異能を発動させた。




「【羅生門】」




芥川の外套が再び黒獣化し、敦に向けて放たれる。


芥川の黒獣は、虎化した敦を的確に攻撃していくが、敦はその怪我をあっという間に消した。




「再生能力!しかも之程の高速で____!」

『すごい!』




これには芥川も、谷崎の治療をしていたAまでもが驚きの声を上げたのだった。

三十六話 ヨコハマ ギヤングスタア パラダヰス(後編)→←三十四話 ヨコハマ ギヤングスタア パラダヰス(後編)



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作者名:ark | 作成日時:2021年1月4日 18時

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