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二十九話 ヨコハマ ギヤングスタア パラダヰス(前編) ページ30

探偵社を出た四人は、話をしながら街を歩いた。




「アハハ、それは脅されましたねェ」


「笑い事じゃないですよう。兇悪なマフィアとか、直に死ぬぞとか……。
途んでもない処に入っちゃった」


「まァまァ」




ため息をつく敦に、谷崎は苦笑する。


そして、なんとかフォローしようと口を開いた。




「ボクでも続けられてる位だから、大丈夫ですッて」


「でも、谷崎さんも【能力者】なのでしょう?どんな力なんです?」




敦は谷崎に聞き返す。

しかし谷崎は、遠慮気味に返した。




「や、あんまり期待しないで下さいよ。戦闘向きじゃないンですから」




そんな様子を見たナオミが、キャッキャと楽しそうに言う。




「うふふ……。
兄様の能力素敵ですよ。ナオミあれ大好き」


「止めなッてナオミ…………こんな処で」

「あら口答え?生意気な口は、どの口かしら?」




街の中でいちゃつく二人に、Aは苦笑し、敦はかあっと顔を赤くする。

そしてAは、話を戻すように言った。




『でも確かに谷崎くんの能力綺麗だよね。私もあれ好きだな』

「なッAちゃんまで……」


「あれ、そういえばAちゃんの能力って……」

「着きました」




ふと敦が疑問を口にするが、言葉を言い切るよりも先に、依頼人の女性が四人に声をかけた。

その声を聞いた四人が一斉に振り向くと、女性は一本の路地を指さす。


四人はそれを見ると順番に入って行った。




「なんか……鬼魅の悪い処ですね」




敦のそんな呟きは、誰にも拾われることなく闇に消えた。




「……おかしい」




ふと立ち止まった谷崎は、そう言って眉を顰める。

親指を顎に当て、少し考える素振りを見せた後、谷崎は依頼人の女性の方を向いた。




「本当に此処なンですか?ええと____」

「樋口です」




依頼人の名前を聞き忘れていた谷崎の質問に、依頼人___樋口___は答える。

谷崎はその返答に一度頷くと続けた。




「樋口さん、無法者と云うのは臆病な連中で___
大抵、取引場所に逃げ道を用意しておくモノです。でも此処はホラ、捕り方があっちから来たら逃げ場がない」

「その通りです」




谷崎がそう言った後すぐに、樋口はその言葉を肯定した。

そして一番上まで閉じていたシャツを緩め、髪を頭の上で結いながら言う。




「失礼とは存じますが嵌めさせて頂きました。
私の目的は、貴方がたです」




言い切った樋口は携帯を取り出し、誰かに電話をかけた。

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作者名:ark | 作成日時:2021年1月4日 18時

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