その笑顔の裏で (ページ24)

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二十三話　ヨコハマギヤングスタアパラダヰス(前編) ページ24

「そういえば、皆さんは探偵社に入る前は何を？」

そんな敦の質問に、その場がシンと静まる。

その反応に疑問符を浮かべる敦。

敦に返事を返したのは、頬杖をついた太宰だった。

「何してたと思う？」

「へ？」

「なにね、定番なのだよ」

『新入りさんは、先輩の前職を中てるんだよ！』

「はぁ.........じゃあ.......」

二人の説明に、納得したような敦。

敦は持っていた湯呑みを置くと、親指を顎に当てて考え始めた。

「谷崎さんと妹さんは...........学生？」

「おっ、中ッた。凄い」

「どうしてお分かりに？」

「ナオミさんは制服から見たまんま、谷崎さんのほうも＿＿＿＿齢が近そうだし、勘で」

最初に中てられた二人は関心したように笑う。

敦の素直な答えに、太宰は口を開く。

「やるねぇ。じゃあ、国木田君は？」

「止せ、俺の前職など如何でも＿＿＿＿＿」

「うーん、お役人さん？」

『惜しい！』

国木田の言葉を遮って答えた敦。

そんな敦に、Aが手で三角を作って見せた。

「彼は元学校教諭だよ。数学の先生」

「へえぇ！」

「昔の話だ、思い出したくもない」

眼鏡を押し上げながらそう言う国木田。

敦はそれを見ながら、頭の中で
「ここはxの累乗を使うに決まっているだろう!!」
と怒鳴る国木田を想像した。

そして、

「(何か納得...........
って云ったら投げられるな)」

と苦笑する。

「じゃ私は？」

「太宰さんは...........」

話が太宰の前職へと移り、敦は太宰を観察する。

見つめられている太宰はニコッと笑うばかりで何も言わない。

敦の想像もつかないという様子に、Aはフフ...と笑みを零した。

「無駄だ小僧。武装探偵社の七不思議の一つなのだ、こいつらの前職は」

「ら？」

『治くんと私の事！』

「最初に中てた人に賞金が有るンでしたっけ」

「そうなんだよね。誰も中てられなくて、懸賞金が膨れあがってる」

そう言いながら、コーヒーカップの中身をマドラーでかき混ぜる太宰。

「俺は溢者の類だと思うが、こいつは違うと云う。しかしこんな奴が真面な勤め人だった筈がない」

マドラーを最後にぱくっと咥える太宰を、谷崎は微妙な顔で見ていた。

敦は膨れあがったという懸賞金に興味がいき、太宰にずいと質問する。

「ちなみに懸賞金って如何ほど」

「参加するかい？賞典は今＿＿＿＿七十万だ」

太宰のその言葉に敦の目の色が変わった。