十九話 或る爆弾 ページ20
敦は死を覚悟したが、いつまでたっても衝撃が来ない。
疑問に思い目を開けると、敦の前に影が差した。
見上げればそこには太宰、国木田、A、そして犯人の少年が立っていた。
「やれやれ...........
莫迦とは思っていたがこれほどとは」
「自 殺愛好家の才能があるね、彼は」
『ふふふっ、まさか犠牲になろうとするとは思ってなかったよ』
皆がいつも通りに談笑する。
敦はその光景を見て混乱していた。
「へ?.....................え?」
「ああーん兄様ぁ!大丈夫でしたかぁぁ!?」ゴキッ
「痛だっ!?」
そう言うと、ナオミが犯人の少年に勢いよく抱きつく。
ナオミの頭が少年__潤一郎__の顎に当たり、聞こえてはいけない音がした。
その二人の状態に、敦はさらに混乱する。
「いい痛い、痛いよナオミ。折れる折れる
って云うか折れたァ!」
「.....................................へ?」
混乱する敦に、国木田が声をかけた。
「小僧、恨むなら太宰を恨め。
若しくは仕事斡旋人の選定を間違えた己を恨め」
『そう云うことだよ敦くん』
「つまりこれは、一種の____入社試験だね」
そう言った太宰の言葉を、敦が反芻する。
「入社.......................試験?」
「その通りだ」
敦の確認するような声に、威厳を感じる低い声が答えた。
《武装探偵社 社長 福沢諭吉
_____能力名【人上人不造】》
「社長」
「しゃ、社長!?」
国木田が近寄り、頭を下げる。
それを聞いた敦は驚いたように声を上げた。
「そこの太宰めが「有能なる若者が居る」と云うゆえ、その魂の真贋試させて貰った」
敦はそれを聞いて、あんぐりと口を開けたまま太宰の方を向く。
太宰は腕を組んで事情を話した。
「君を社員に推薦したのだけど、如何せん君は区の災害指定猛獣だ。保護すべきか、社内でも揉めてね」
『で、社長の一声でこうなった、と』
「で社長...........結果は?」
国木田は社長に結果を聞く。
社長は少しの間黙って敦を見つめた後、目を伏せ踵を返して言った。
「太宰に一任する。A、少し来い」
『はーい!』
Aは返事をすると、社長について行く。
敦はフリーズしてしまったのか、沈黙した。
「.............」
「合格だってさ」
太宰のその言葉で、敦はやっと意識を取り戻した。
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作者名:ark | 作成日時:2021年1月4日 18時