その笑顔の裏で (ページ18)

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十七話　或る爆弾ページ18

犯人は、スイッチを持った方の手の人差し指で国木田を指して叫ぶ。

「知ってるぞ。アンタは国木田だ！
アンタもあの嫌味な【能力】とやらを使うンだろ!?
妙な素振りをしたら、皆道連れだ！」

その様子を見ていた太宰が、呟く。

「まずいね、これは」

『うん、探偵社に私怨を持つだけあって、社員の顔と名前を調べてる』

「社員の私やAちゃんが行っても、余計警戒されるだけか.......。却説、どうしたものか」

太宰はそう言うと、ふと敦に視線を移した。

「(何か、物凄く嫌な予感が...)」

敦の嫌な予感はよく当たるらしい。

太宰は敦と目が合った瞬間、“にやぁ”とゲスい笑みを浮かべた。

.

.

「や、やややややめなさーい！親御さんが泣いてるよ！」

「な、何だアンタっ」

「(ひいい怖い！怖い！)」

敦の嫌な予感は当たった。

それは数分前のこと＿＿＿＿＿。

「社員が行けば犯人を刺激する。
となれば、無関係で面の割れてない君が行くしかない」

太宰は敦にそう話した。

勿論、敦はすぐに反対の意を示したが...。

「むむ、無理ですよそんなの！第一どうやって」

「犯人の気を逸らせてくれれば、後は我々がやるよ」

『うんうん』

「＿＿＿＿そうだな、
落伍者の演技でもして気を引いては如何かな。
信用し給え。この程度の揉め事、武装探偵社にとっては朝飯前だよ」

二人にそう言われて、やるしか道がなくなってしまったのだった。

そして今、敦はこの状況に陥っているのである。

「ぼぼ、僕は、さ騒ぎをき聞きつけた一般市民ですっ！いい生きてれば好いことあるよ！」

「誰だか知らないが無責任に云うな！みんな死ねば良いンだ！」

「ぼ、僕なんか孤児で家族も友達も居なくて、この前その院さえ追い出されて、行くあても伝手も無いんだ！」

「え...............いや、それは」

予想外の返答に、戸惑う犯人。

しかし敦は、半ば演技を忘れてさらに畳み掛けた。

「害獣に変身しちゃうらしくて、軍警にバレたらたぶん縛り首だし。
とりたてて特技も長所も無いし、誰が見ても社会のゴミだけど。
ヤケにならずに生きてるんだ！だ、だだだから」

その様子を見ている太宰達。

「(敦君、駄目人間の演技上手いなぁ...............)」

『(もはやあれ、半分本人だね)』

太宰はニコニコと笑い、Aは苦笑いして見ているのだった。