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四十六話 運命論者の悲み ページ47

街のとある公衆電話機のボックスの中。

そこには緊張した面持ちの敦がいた。


敦は受話器を手に取り、どこかへ電話する。




「何方ですか?」




2コールでカチャリと取られた電話の向こうからは、つい先日聞いた声が返事をした。


敦は緊張の表情のままその声に答えた。




「僕だ」

「人虎!?」




電話の主に驚いたのか、相手は大きな声でそう言った。


敦が電話をかけたのは樋口。

電話先の樋口は一度は驚いたものの、冷静さを取り戻す。




「(そうか、探偵社で渡した名刺を見て……)
先日はお仲間に助けられたようですが、次はそうはいきません。
それで、ご用件は」


そう促した樋口に、敦は一度心を落ち着ける。

そして改めて決意したように言った。




「僕は探偵社を辞める」

「な……!?」


「辞めてひとりで逃げる。捕まえてみろ」




敦の突然の言葉。

樋口はそれに少なからず驚いた。


しかし、樋口は直ぐに敦の言葉の意図を読み取り、話を進める。




「成る程____
[だから探偵社には手を出すな(・・・・・・・・・・・・・)]と?」




樋口がそう確認するが、敦はそれに応えることなくガチャッと受話器を置いた。

それに対して樋口は苛つきを表情に出すが、直ぐに携帯を閉じる。




「【黒蜥蜴】を呼べ」




樋口が後ろを振り向き部下にそういうと、部下は一礼してどこかへ消えていった。


そして一人になった部屋で、樋口はボソリと呟く。









「______Aさんは止めなかったの?止めそうなのに」

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作者名:ark | 作成日時:2021年1月4日 18時

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