十四話 或る爆弾 ページ15
___朝。
下宿寮の一室、カーテンの開いた部屋には、窓からの陽の光が沢山入ってきていた。
敦は、その部屋の真ん中に敷かれた布団の中で目を覚ました。
「ここ、どこだ.....」
目が覚めたそこは、敦の記憶にはない。
いつものような目覚めの悪い朝ではないことに、敦は疑問を抱いた。
「(孤児院の起床喇叭は?早朝点呼は?)」
自分の置かれた状況を確認するべく、敦は周りを見回した。
そんな時、いきなり枕元で大きな音が鳴った。
ピピピピピ
その音に驚いた敦は、半分しか起こしていなかった体をがばっと起こす。
「(うわわ、鳴った!)」
ピピピピピピピピピ
なり続ける電子音に、慌てて電話を拾い上げた。
「(ぼ、釦どれ!?)」
どれが受信釦か分からず、色んな釦を押す敦。
ようやくピッという受信音が聞こえ、一安心して電話を取った。
「は、はい?」
「やあ、敦君。新しい下宿寮はどうだい?善く眠れた?」
「(そうか.......僕は)
お蔭様で.......こんな大層な寮を紹介いただいて」
自分の周りを取り囲む幸せな環境に、心がじーんと暖まった敦は、ボロッと涙を流す。
「それは好かった。ところで、頼みが有るのだが」
「?」
頼みと聞いて、疑問符を浮かべた敦。
電話の向こうから、太宰が苦しそうに頼み事を言った。
「助けて死にそう」
あれから数分後のこと。
敦は枕元に置いてあった服に着替え、太宰の目の前まで来た。
そこにあったのは、頭と足だけが土管からはみ出た太宰の姿だった。
一瞬にして、敦の表情が消える。
太宰はそんなことに構うことなくいった。
「やあ、よく来たね。早速だが助けて」
それをきいて混乱を顕にする敦。
「え.............?何ですかこれ?」
「何だと思うね?」
敦の質問に対して、太宰は質問で返した。
「朝の幻覚?」
「違う」
どうやら不正解だったらしい。
「こうした自 殺法があると聞き早速試して見たのだ。が、苦しいばかりで一向に死ねない。
腹に力を入れてないと徐々に嵌まる。そろそろ限界」
「はあ.........
でも、自 殺法なのでしょう?そのままいけば」
「苦しいのは嫌だ。当然だろう」
敦の尤もな発言に、太宰は般若のような形相でそう返す。
「なるほど」
敦はよくわかっていないまま、とりあえず納得した振りをした。
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作者名:ark | 作成日時:2021年1月4日 18時