106 腹の探り合い side 善法寺 ページ7
「疑問に思ったことがあるんだが……」
善法寺と共に薬草を仕分けしていた食満が話を切り出した。天女を含めた下級生は牡丹と芍薬を、善法寺と食満は見分けにくい薬草を担当していた。
「ん？なに？」
「乱太郎達、天女様のことを『Aさん』って呼んでたよな。初めて会ったわけじゃないんだろ？」
善法寺はニコッと笑って、「そうだよ」と返した。当然のように言う彼に、食満は驚いた。
「天女様、ううん、榎本さんと会ったのはだいぶ前だよ」
「じゃあ、何でお互い初対面みたいに……」
「だって、知り合いだって言ったら、妖術にかかってるって警戒するでしょ」
「……いやまあ、確かに」
落とし穴の業務をすることが多い天女と、落とし穴に落ちることが多い保健委員会は、自然と遭遇することになる。幾度も助けられた中で、後輩達は天女を信用するようになった。
「僕もあの人は今までと同じだって思ってた。後輩たちに妖術をかけたって。でも、しっかりと反論されて……もう一回、みんなと話した」
一気に世界が違く見えた。後輩達の言葉が自分に届いた。
「まだ天女様に縛られてたんだ……だから、みんなの言葉を信じられなかった。それを教えてもらった」
「そうだったのか……」
「留三郎も、もっと話したらわかるよ」
にっと笑うと、彼も「かもな」と笑みを返した。
「それじゃあ、保健委員会は天女様の味方なわけか」
「うん、そうなるね」
「他にはいないのか？」
「榎本さんは規則を守る人だから、僕達以外は難しいと思うよ」
「でも、保健委員会と裏で会ってたわけだろ？ほかにも会ってそうだけどな」
「それなら僕達に話してくれるよ」
「ふーん、そうか。なら、いないのかもな」
彼の笑顔に、言葉に、声に、違和感が混ざっていく。
・・・
「おっ、みんな分け終わったみたいだね」
空っぽになった籠を覗く善法寺。
「お話は終わったんですか？」
「全部話したら分かってくれたよ」
下級生達の表情がぱあっと輝いた。彼にいる食満が顔を見せる。
「申し訳ねぇが、信じられないって気持ちはまだある……でも、伊作の言葉を信じてみる」
「……私にとってはそれだけでありがたいぐらいです」
「ははっ。確かに、こんな謙虚な人が今までの天女様と同じなわけないな」
天女にそう言い、食満は再び笑顔を見せた。
(留三郎……どうして……僕の言葉を信じてくれないんだ……)
善法寺と天女だけが、違和感を感じ取っていた。
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和三盆(プロフ) - 飴玉くんさん» ありがとうございます〜！タソガレドキは毒を入れないとは二人も分かっているけど、上級生が毒味するのはあまりにもリスクが高く、下級生はもってのほか。なので、彼女がやるのが一番なんですよねぇ。 (3月30日 20時) (
レス) id: 3efe28aec7 (このIDを非表示/違反報告)
飴玉くん - 毒があるかもしれないおむすびを食べるなんて男気に溢れていますねぇ！今回の作品もとても好きです！！！ (3月30日 0時) (レス) id: bc84786978 (このIDを非表示/違反報告)
和三盆(プロフ) - 凡人様さん» ありがとうございます！！楽しんでいただけるよう頑張ります！ (3月13日 17時) (レス) id: 3efe28aec7 (このIDを非表示/違反報告)
凡人様(プロフ) - すっごく面白くて最新話まで読み終えちゃいました！！夢主さんが誰にも靡かないで逆に利用してやる！！って感じのずる賢いところがとっても大好きです✨このシリーズが長く続きますように🕊️ (3月12日 5時) (レス) id: 2ec7772a57 (このIDを非表示/違反報告)
和三盆(プロフ) - 飴玉くんさん» ありがとうございます！彼女は立場も力も弱い人間なので、ずる賢く生きる必要があるんですよねぇ。 (3月5日 17時) (レス) id: 3efe28aec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：和三盆 | 作成日時：2023年12月8日 15時
