140 『些細な気遣い』 ページ41
中在家が天女にしか聞こえないような小声で「ありがとうございます」と小さく頭を下げると、下級生におむすびを配り始めた。
「「「いただきまーす！」」」
元気よくおむすびを頬張り始めた下級生を横目に、おむすびを受け取った不破も小さな声で話し始めた。
「今度からはやめてくださいね……かなり危ない行為ですから」
「そうします。お気遣いありがとうございます」
「いえ、お礼を言われるほどでは……」
照れ臭そうにしながら、おむすびを口に放り込んだ。
お盆の上のおむすびが無くなると、雑渡がこの後どうするのかと尋ねた。
「もそ……農書に似た記述がないかどうかの調査と……周辺の環境を見て回ろうかと……」
「周囲ね。尊奈門に案内させるよ。二班に分かれるって行動するって感じかな？」
「……ええ、そうなるかと」
図書委員長の中在家により、農書の確認は中在家と久作、怪士丸が、周辺調査を不破ときり丸が行うこととなった。まだこの時代の文字を読むことが難しい天女は、周辺調査班についていくことになった。
少しの昼休憩の後、諸泉を先頭に家を後にした。
「それで、どこを見て回りたいかは決まってるのか？」
「実はあまり……」
不破は首を振ってそう言った。やはり現地に来ても、どうしてここが不作の地なのかはよく分からないらしい。
「どうかしたんすか？天女……えーと……」
立ち止まって畑を見ていた天女に、きり丸が話しかけた。今までも変わらない天女だと思っていたからか、名前を忘れているようだ。
「あー……榎本Aです。天女様でもいいよ。無理して名前を呼ぶ必要はないからね」
「いいえ、Aさんって呼びます！」
「そう？君は確か……摂津きり丸くんだよね。摂津君でいいのかな？」
「……きり丸でいいっすよ。摂津は名字じゃなくて、生まれた土地の名前ですから。おれ、小さい時に家族が死んだんです。戦で村ごと」
「ああ……なるほど。確かに摂津という言葉は聞いたことがあるね。じゃあ、きり丸君って呼んでもいいかな？馴れ馴れしくなっちゃうけど」
「べ、別にそれはいいっすけど……」
きり丸は口を開けてぽかんとし、心ここに在らずといった様子を見せた。
「どうかした？」
彼は瞬きを何度かした後、再度天女を見上げると笑顔を見せた。
「なんでもないです！先輩達のところに行きましょ、置いてかれる前に！」
「ああ……そうだね？」
何故か足取りの軽い彼に、天女は少し首を傾げた。
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和三盆(プロフ) - 飴玉くんさん» ありがとうございます〜！タソガレドキは毒を入れないとは二人も分かっているけど、上級生が毒味するのはあまりにもリスクが高く、下級生はもってのほか。なので、彼女がやるのが一番なんですよねぇ。 (3月30日 20時) (
レス) id: 3efe28aec7 (このIDを非表示/違反報告)
飴玉くん - 毒があるかもしれないおむすびを食べるなんて男気に溢れていますねぇ！今回の作品もとても好きです！！！ (3月30日 0時) (レス) id: bc84786978 (このIDを非表示/違反報告)
和三盆(プロフ) - 凡人様さん» ありがとうございます！！楽しんでいただけるよう頑張ります！ (3月13日 17時) (レス) id: 3efe28aec7 (このIDを非表示/違反報告)
凡人様(プロフ) - すっごく面白くて最新話まで読み終えちゃいました！！夢主さんが誰にも靡かないで逆に利用してやる！！って感じのずる賢いところがとっても大好きです✨このシリーズが長く続きますように🕊️ (3月12日 5時) (レス) id: 2ec7772a57 (このIDを非表示/違反報告)
和三盆(プロフ) - 飴玉くんさん» ありがとうございます！彼女は立場も力も弱い人間なので、ずる賢く生きる必要があるんですよねぇ。 (3月5日 17時) (レス) id: 3efe28aec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：和三盆 | 作成日時：2023年12月8日 15時
