136 関与してはならない ページ37
「助けに行く許可を？」
「はい、先生方にどう報告したかはわかりませんが……山賊に捕まっているとのことです。今ならまだ──」
「ダメじゃ」
「な、何でですか！？このまま見過ごせと！？」
学園長はずずっとお茶を飲んだ。平穏を保っている。対照的に、潮江は冷や汗をかき、竹谷は不安そうな顔をしている。
「榎本くんはわしらから見ても、完璧な作戦を立てて図書委員会と共に出ていった。山賊に捕まったというのも、策の内じゃ。安心せい」
彼は思わず近くに座っている土井や山田の方を見た。彼らはその視線に応えるように頷いた。教師もまた平然としていた。
「ですが、確認ぐらいすべきでは……」
「ダメなもんはダメじゃ。わしらが関与すること自体がまずい。ただでさえ、Aくんを敵だと思っておる忍たまは教職員も疑っておる。ここで許可を出したら、それを肯定するようなものじゃ」
天女一人で危機を乗り越えてこそ、今までとは違うのではないかという疑念が生まれるのだと。
「妖術にかかった忍たまに助けてもらう天女様は多い。じゃが、一人で立ち向かう者は少ない。それどころかおらんじゃろ」
「だから……帰ってくるのをただ待てと？」
「ただ待て？いいや、信じて待つのじゃ。文次郎」
天女は必ず戻ってくる。図書委員会と仲良くなっていることだろう。学園長はしわがれた声で笑いながらそう言った。
潮江と竹谷は言いたいことがたくさんあるようだったが、口を結び、その場から姿を消した。彼らの気配が完全になくなると、学園長は大きくため息をついた。
「よろしかったのですか？彼らに行ってもらったほうがいいのでは……」
「それもそうですし。完璧な策とはなんです？聞いた覚えがありませんが……」
「あの子の策など、あってないようなものじゃ。ほとんど時の運に任せておったわ」
平然としていた二人の顔が不安に染まっていく。
「そんな！やはり二人に行かせた方が……！」
「言ったじゃろう、土井先生。わしらが手を出してはいかんのじゃ。それは忍たまとて同じこと。あの子がやらねばならん」
生きて、元の時代に帰るために立ち向かえばならない。これは確定事項だと。
「敵も味方も皆、この学園から出さぬように見張るのじゃ」
「「……はっ」」
二人が姿を消した後、学園長はヘムヘムに茶飲みを渡し、おかわりを要求した。自分しかいない庵から庭園を見つめる。
「……お前さんなら乗り越えるはずじゃ、信じておるぞ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 305人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
和三盆(プロフ) - 飴玉くんさん» ありがとうございます〜！タソガレドキは毒を入れないとは二人も分かっているけど、上級生が毒味するのはあまりにもリスクが高く、下級生はもってのほか。なので、彼女がやるのが一番なんですよねぇ。 (3月30日 20時) (
レス) id: 3efe28aec7 (このIDを非表示/違反報告)
飴玉くん - 毒があるかもしれないおむすびを食べるなんて男気に溢れていますねぇ！今回の作品もとても好きです！！！ (3月30日 0時) (レス) id: bc84786978 (このIDを非表示/違反報告)
和三盆(プロフ) - 凡人様さん» ありがとうございます！！楽しんでいただけるよう頑張ります！ (3月13日 17時) (レス) id: 3efe28aec7 (このIDを非表示/違反報告)
凡人様(プロフ) - すっごく面白くて最新話まで読み終えちゃいました！！夢主さんが誰にも靡かないで逆に利用してやる！！って感じのずる賢いところがとっても大好きです✨このシリーズが長く続きますように🕊️ (3月12日 5時) (レス) id: 2ec7772a57 (このIDを非表示/違反報告)
和三盆(プロフ) - 飴玉くんさん» ありがとうございます！彼女は立場も力も弱い人間なので、ずる賢く生きる必要があるんですよねぇ。 (3月5日 17時) (レス) id: 3efe28aec7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：和三盆 | 作成日時：2023年12月8日 15時
