134 根を張るように ページ35
天女に会ったことのある者の多くが、その報告を聞き、胸に大きな罪悪感を持ち始めた。
──酷い目に遭わなければいけないほど、天女は何かしただろうか、と。
◇
妖術にかかったとされている善法寺は、医務室にいた。先ほどまで共にいた食満は五年長屋に行った。鉢屋達が帰ってきたという知らせが届いたからだ。
「榎本さん……」
すると、風を切るような微かな音が聞こえ、彼は天井を見上げた。六年が使う矢羽音だ。
『文次郎！どうなったの？榎本さんは無事？』
『殺されてはいないが……分からん。あいつらによると、山賊に襲われてるらしい』
『そんな……早く助けに行かないと！』
立ち上がろうとする彼の肩を、潮江は押さえつけた。
『どうせ行こうとしても、仙蔵達に防がれるだけだ』
『で、でも、それじゃ──』
突如現れた天井からの気配に、二人はギロリとその気配がする方を睨みつけた。「ひぃ〜っ！」と悲鳴を上げながら、五年の二人が降りてきた。
「そんな睨まなくても……」
「なんだ、竹谷に久々知か。何で天井裏なんかにいた？普通に襖を開けれて入ればいいものを」
「いや、その──……」
竹谷の目が善法寺に向けられたが、すぐに視線を逸らした。
「やっぱり辞めておきます！」
久々知の腕を掴んで逃げ帰ろうとする彼の肩を、潮江ががしりと掴んだ。逃げるつもりなのかと言いたげな視線に、彼の表情が青ざめていく。
「ほお……お前らもだったのか。保健委員だけではないと思っていたが、まさかな」
「し、潮江先輩……？何を言って……」
「仙蔵の言う通り、監視についておいてよかった。こうやって、妖術にかかっている奴らが他にいると知れた」
「なっ、違います！俺達は妖術にかかっていません！」
「は、八左ヱ門の言う通りです！ただ、先輩からお話を聞きたく……！」
潮江の眉がぴくりと動いた。
「聞いてどうする？天女様はもう戻ってこない。いないやつの話をするなんて無駄だろうが」
久々知が善法寺に助けを求めるように視線を向けるが、なぜか彼は真剣な眼差しでこちらを見上げていた。
「ふんっ、鉢屋達のところに連れてってやる」
潮江は竹谷の胸ぐらを掴み、久々知の腕も掴むと部屋から追い出そうとする。
「あいつらと話し合って、あの天女の醜さとやらをしかと──」
「醜くなんてない」
「……なんだと？」
135 動き出す→←133 止まらない違和感 side 鉢屋
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和三盆(プロフ) - 飴玉くんさん» ありがとうございます〜！タソガレドキは毒を入れないとは二人も分かっているけど、上級生が毒味するのはあまりにもリスクが高く、下級生はもってのほか。なので、彼女がやるのが一番なんですよねぇ。 (3月30日 20時) (
レス) id: 3efe28aec7 (このIDを非表示/違反報告)
飴玉くん - 毒があるかもしれないおむすびを食べるなんて男気に溢れていますねぇ！今回の作品もとても好きです！！！ (3月30日 0時) (レス) id: bc84786978 (このIDを非表示/違反報告)
和三盆(プロフ) - 凡人様さん» ありがとうございます！！楽しんでいただけるよう頑張ります！ (3月13日 17時) (レス) id: 3efe28aec7 (このIDを非表示/違反報告)
凡人様(プロフ) - すっごく面白くて最新話まで読み終えちゃいました！！夢主さんが誰にも靡かないで逆に利用してやる！！って感じのずる賢いところがとっても大好きです✨このシリーズが長く続きますように🕊️ (3月12日 5時) (レス) id: 2ec7772a57 (このIDを非表示/違反報告)
和三盆(プロフ) - 飴玉くんさん» ありがとうございます！彼女は立場も力も弱い人間なので、ずる賢く生きる必要があるんですよねぇ。 (3月5日 17時) (レス) id: 3efe28aec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：和三盆 | 作成日時：2023年12月8日 15時
