130 『芽生えた種』 ページ31
「目があああ！！」
「私こそ……はぁ……この出会いに感謝しないと……どうもありがとう」
「てめぇ、調子に乗りやがって！！」
もう一人が刀を抜き、天女に振り下ろしていく。使い慣れていない苦無を握り、対峙する。
ビュンッ！！
その時、斜面上方から手裏剣が山賊を襲い、彼女と彼らの間に撒菱が巻かれた。
「いでぇ！くそッ、今度はなんだよ！！」
「──天女様！！」
この場の空気を引き裂く、悲鳴に似た叫びが上から聞こえてきた。
「あっ……」
崖の上を見上げると久作がいた。叫んだ彼はひどく辛そうな顔をして、涙を目に溜めていた。
「怪士丸！先輩達を呼んでくれ！！」
「は、はいぃ……！」
「はぁ……はぁ……君は……」
「もう……もう大丈夫ですから！」
彼は再び手裏剣を撃った。忍者のたまごの的確な撃ちで、山賊は逃げていった。天女は地面に座り込む。痛みに襲われ、地面に血が流れていく。
「はぁ……はぁ……いたい……」
少しすると、誰かが軽やかに飛び降りてきた。
「私を、助けていいんですか……」
「……もっと早く助けるべきでした」
首を傾げていると、中在家は天女を抱えて崖を登る。上には図書委員がおり、その目に天女の姿が映る。
「そ、その怪我っ……！」
服装の所々が切れ、髪が乱れている。落下時にできた無数の擦り傷、血が滲む左掌の包帯と小袖。下級生達の表情が怯えで染まる。
「少し先に廃屋があるので、そこで手当てを……」
不破がそう言うと中在家は天女を背負い、廃屋に向かった。その背にもたれかかると、一気に疲労感が襲ってきた。
だんだんと瞼が重くなり、天女は眠りについてしまった。
・・・
天女が眠りについている間、できる限りの手当てを図書委員会はしていた。
「ここは……」
「もそ……廃屋です。先に手当てさせて頂きました……ご気分は？」
ゆっくりと体を起こし、廃屋の中を眺める。木造の小屋で屋根も壊れて、空と茂った木々が見える。
「ああ、気分ですか……疲労感でいっぱいですね……」
「どうやって……三郎達から……」
──逃げられたのか、そう聞きたいのだろう。少々負の感情を乗せた視線を不破に向けると、彼は気まずそうな顔をした。
「そうですね……煙玉とか……相手が知らない未来のものとか使ったので……でも……大半は運ですね」
「さ、策があったんじゃ……」
その言葉に、天女は半ば呆れるように笑った。
「無いようなもんですよ」
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和三盆(プロフ) - 飴玉くんさん» ありがとうございます〜！タソガレドキは毒を入れないとは二人も分かっているけど、上級生が毒味するのはあまりにもリスクが高く、下級生はもってのほか。なので、彼女がやるのが一番なんですよねぇ。 (3月30日 20時) (
レス) id: 3efe28aec7 (このIDを非表示/違反報告)
飴玉くん - 毒があるかもしれないおむすびを食べるなんて男気に溢れていますねぇ！今回の作品もとても好きです！！！ (3月30日 0時) (レス) id: bc84786978 (このIDを非表示/違反報告)
和三盆(プロフ) - 凡人様さん» ありがとうございます！！楽しんでいただけるよう頑張ります！ (3月13日 17時) (レス) id: 3efe28aec7 (このIDを非表示/違反報告)
凡人様(プロフ) - すっごく面白くて最新話まで読み終えちゃいました！！夢主さんが誰にも靡かないで逆に利用してやる！！って感じのずる賢いところがとっても大好きです✨このシリーズが長く続きますように🕊️ (3月12日 5時) (レス) id: 2ec7772a57 (このIDを非表示/違反報告)
和三盆(プロフ) - 飴玉くんさん» ありがとうございます！彼女は立場も力も弱い人間なので、ずる賢く生きる必要があるんですよねぇ。 (3月5日 17時) (レス) id: 3efe28aec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：和三盆 | 作成日時：2023年12月8日 15時
