128 醜く足掻け�� ページ29
空中で体を離され、天女は崖下へと落ちていった。どしんっ！という鈍い音と共に、体に痛みが走る。強く体を打ってしまったのだ。
「い゛った……」
痛みを感じながら体を起こし、木々を見上げる。嫌な笑みを浮かべる生徒たちがそこにいた。彼らの中に味方の顔はない。いるのは五年の二人だけ。やはり彼らだった。
「はぁ……はぁ……っ！」
風を切るような音が響くと共に、足元に何かが刺さった。苦無だった。
「ゔっ！」
今度は右腕を鏢刀が掠め、痛々しい傷が生まれる。
「い゛……ふーっ、はぁ……」
体と脳内を恐怖が埋めていく。変わらず、木の上の忍者は嗤っている。
(こわい、体がっ、うごかない……)
しかし、硬直する彼女の体を�犖龍燭悗料曚い筏�郷への渇望�瓩箸いΧ�い感情が突き動かす。
(──そうだ。あれまで距離はそう遠くない……そこまで行けば……退くはずだ)
「可能性に、賭けるしかない」
天女は膨らんでいる荷物から何かを取り出した。山本が用意してくれた打竹と煙玉だ。
(帰るために逃げ延びる……！！)
鉢屋が気付き、武器を飛ばして火種を壊そうとするが、それよりも先に、火がついた。
ボォンッ！！
煙が天女を覆い隠す。その隙に、地面に刺さった苦無を抜き、森の中を天女は走り出した。
「はっ、はぁ……はぁ！」
逃げ仰るつもりの天女の背に、鉢屋の怒号が降りかかった。走るのに必死で聞き取れやしない。
「ふっ、はぁ……！」
しかし、彼らのスピードと天女の走る速度では天と地の差がある。二人はすぐに天女を翻弄するように攻撃を繰り返すようになった。
(すぐに、捕まえる気は……ないのか……？)
天女も何も考えずに、森を奔走してるわけではない。目指すのは、今まで歩いてきた道だ。
しかし、そうだと気づいたのか、それとも逃げ続ける天女に嫌気が刺したのか、縄鏢が天女の足を捉えた。
「うわっ！」
体勢を崩し、枯葉に覆われた地面に倒れ込む。一気に集中が切れていく。はっ、はっと息が途切れる。もう動く気力がない。
「ハッ、ハッ、はぁー……はぁ……」
すると、二人が降りてきた。音もなく、枯れ葉の地面に降り、立ち上がろうとする天女を見下ろす。余裕に満ちた表情を見せている。
「煙玉程度で私達から逃げられるわけがないだろう。本当に天女っていうのはどうしてこう頭が足りないのか」
「やめてあげなよ、三郎〜。天女様は頑張って逃げようとしたんだからさ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 305人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
和三盆(プロフ) - 飴玉くんさん» ありがとうございます〜！タソガレドキは毒を入れないとは二人も分かっているけど、上級生が毒味するのはあまりにもリスクが高く、下級生はもってのほか。なので、彼女がやるのが一番なんですよねぇ。 (3月30日 20時) (
レス) id: 3efe28aec7 (このIDを非表示/違反報告)
飴玉くん - 毒があるかもしれないおむすびを食べるなんて男気に溢れていますねぇ！今回の作品もとても好きです！！！ (3月30日 0時) (レス) id: bc84786978 (このIDを非表示/違反報告)
和三盆(プロフ) - 凡人様さん» ありがとうございます！！楽しんでいただけるよう頑張ります！ (3月13日 17時) (レス) id: 3efe28aec7 (このIDを非表示/違反報告)
凡人様(プロフ) - すっごく面白くて最新話まで読み終えちゃいました！！夢主さんが誰にも靡かないで逆に利用してやる！！って感じのずる賢いところがとっても大好きです✨このシリーズが長く続きますように🕊️ (3月12日 5時) (レス) id: 2ec7772a57 (このIDを非表示/違反報告)
和三盆(プロフ) - 飴玉くんさん» ありがとうございます！彼女は立場も力も弱い人間なので、ずる賢く生きる必要があるんですよねぇ。 (3月5日 17時) (レス) id: 3efe28aec7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：和三盆 | 作成日時：2023年12月8日 15時
