127 遠出の時間 ページ28
遠出の日当日。ついにこの日が来た。
まだ朝日が登りきっていない時間に、天女たちは正門前に集まった。他に正門の前にいるのは、小松田と学園長だけだった。学園長が中在家にコソコソ何か話すと、彼は小さく頷いた。
「もそ……では、いってまいります」
「ああ。図書委員会、頼んだぞ」
先頭を中在家が、その後ろにきり丸、怪士丸、久作、不破、そして最後尾の天女と続き、学園を出発した。
道中、休憩を適度に挟みながらも、沈黙の中、山を越えていった。
「その……目的の村ってどんなところなんですか？農書をいくつか持っていくみたいですが……」
沈黙に耐えかねた久作がそう聞いた。中在家は懐から手紙を取り出すと、彼に見せるように広げた。
「もそ……作物が育たなくて困っているようだ。何もしても駄目だと……」
だから、農書を持っていくのかと納得したようだった。今度はきり丸が「雨が降ってないとか？」と聞くと、不破が首を振った。
「天候不順なら原因がはっきりしてる。でも、そうじゃないからこそ学園長先生に手紙を出した。そうですよね？」
「ああ……おそらくそうだろう……」
原因と思わしきものは手紙から推測出来ないようだった。天女は竹筒の水を飲みながら、今考え得る原因を思い浮かべていた。
「てっ、天女様はどう思いますか？」
声を少し裏返らせながら、久作がそう尋ねてきた。その場の空気が固まるが、中在家はゆっくりと視線をこちらに向け、返答を待っているようだった。
「……土壌とかでしょうか」
「へえ、農作の心得でもあるんですか？」
刺々しさを含んだ不破の言葉に、天女は「
「ですが、土壌にあるはずの栄養が不足して不作に……と言ったことはあると聞いたことがあるので」
「……そうでしたか」
天女が詳しいわけがないと言わんばかりの視線を、不破ときり丸から向けられた。
(まあ……そんなことより、その前に自分の命をどう守るか考えるべきか)
一同は休憩を終えると、それからまた山道を歩いていく。このまま村まで着いてしまうのだろうか。
そんなことを思いながら、崖沿いの道を歩いていた時、ぬるりと上から手が現れた。
「え、」
その手によって口を塞がれ、そのまま崖下へと引き摺り込まれていく。
不破と目が合った。
彼はすぐに目を逸らし、何もなかったように歩き出していった。
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和三盆(プロフ) - 飴玉くんさん» ありがとうございます〜！タソガレドキは毒を入れないとは二人も分かっているけど、上級生が毒味するのはあまりにもリスクが高く、下級生はもってのほか。なので、彼女がやるのが一番なんですよねぇ。 (3月30日 20時) (
レス) id: 3efe28aec7 (このIDを非表示/違反報告)
飴玉くん - 毒があるかもしれないおむすびを食べるなんて男気に溢れていますねぇ！今回の作品もとても好きです！！！ (3月30日 0時) (レス) id: bc84786978 (このIDを非表示/違反報告)
和三盆(プロフ) - 凡人様さん» ありがとうございます！！楽しんでいただけるよう頑張ります！ (3月13日 17時) (レス) id: 3efe28aec7 (このIDを非表示/違反報告)
凡人様(プロフ) - すっごく面白くて最新話まで読み終えちゃいました！！夢主さんが誰にも靡かないで逆に利用してやる！！って感じのずる賢いところがとっても大好きです✨このシリーズが長く続きますように🕊️ (3月12日 5時) (レス) id: 2ec7772a57 (このIDを非表示/違反報告)
和三盆(プロフ) - 飴玉くんさん» ありがとうございます！彼女は立場も力も弱い人間なので、ずる賢く生きる必要があるんですよねぇ。 (3月5日 17時) (レス) id: 3efe28aec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：和三盆 | 作成日時：2023年12月8日 15時
