124 固着概念 ページ25
天女はすでに生徒の大半が敵で、上級生が自分の命を断とうと画策していることに気づいている。それなのに、そんな素振りを見せない。言われれば知ってると答え、言われなければ口にも出さない。
・・・
「ずいぶんと余裕そうですね」
答えようともしない天女に、「ああ、規則ですよね」と彼も慣れたように言う。名前は忘れたが、学級委員長委員会に所属していて、同じ顔が図書委員会にいることは知っている。
「でも、もう殺されるのに規則なんて守る必要ありますか？」
天女は答えずに、長屋の廊下を箒で履いていく。彼はその少し先で座りながら、天女を伺っている。
「伊作先輩以外にも味方がいるんですかね？だから、普段通り過ごしてる？それとも、妖術をかけるから？興味のないふりをして油断させてる？」
作戦の指揮役である立花は、天女を目の前にしてもこんなふうに考えを吐露することはなかった。何の目的があってペラペラと自分の考えを垂れ流しているのだろうか。
「ねえ、聞いてます？天女様」
いや、彼もまた余裕を持っているのだろう。天女様を殺めるなど赤子の手をひねるように簡単だと。
「天女様」
彼は立ち上がり、音も立てずに天女に近づいた。天女が箒を持っている手を包み込むように捉え、動きを止めさせる。ギリッと痛みを感じるほど、手を握ってくる。
「お前は一度痛い目に遭うべきだ」
耳元で、恐ろしい声が響く。
「痛い目どころか、そのままあの世に行きそうだけどな」
だからなんだと言うのか。
そんな天女の態度にまだ苛立ちが増したのか、彼はもう一度ギリッと手を握った。力が強く、右手がかすかに痛くなる。
「い゛っ！？」
握られていない、空いていた手に痛みが走り、天女は顔を歪めた。そして、すぐさま彼を見た。彼はにやりと笑うと姿を消した。
「……」
左掌にぱっくりと開いた傷口から、ぽたぽたと血が滴る。
「痛すぎる……左手なのが不幸中の幸いか……」
廊下を汚さないようにと動きながら、持っていた手拭いで左手を覆う。
「妖術を警戒してたんじゃなかったの？本当は妖術なんてかけられないこと知ってるんじゃ……」
痛みに耐えながら、道具を抱える。
(天女様に接近するなんて飛んで火に入る夏の虫だ)
そうでないなら、彼らはそれがあろうとなかろうと天女様は排除すべき存在だと認識していることになる。
「やっぱり何を言ったって無駄じゃないか」
天女は吐き捨てるようにそう言った。
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和三盆(プロフ) - 飴玉くんさん» ありがとうございます〜！タソガレドキは毒を入れないとは二人も分かっているけど、上級生が毒味するのはあまりにもリスクが高く、下級生はもってのほか。なので、彼女がやるのが一番なんですよねぇ。 (3月30日 20時) (
レス) id: 3efe28aec7 (このIDを非表示/違反報告)
飴玉くん - 毒があるかもしれないおむすびを食べるなんて男気に溢れていますねぇ！今回の作品もとても好きです！！！ (3月30日 0時) (レス) id: bc84786978 (このIDを非表示/違反報告)
和三盆(プロフ) - 凡人様さん» ありがとうございます！！楽しんでいただけるよう頑張ります！ (3月13日 17時) (レス) id: 3efe28aec7 (このIDを非表示/違反報告)
凡人様(プロフ) - すっごく面白くて最新話まで読み終えちゃいました！！夢主さんが誰にも靡かないで逆に利用してやる！！って感じのずる賢いところがとっても大好きです✨このシリーズが長く続きますように🕊️ (3月12日 5時) (レス) id: 2ec7772a57 (このIDを非表示/違反報告)
和三盆(プロフ) - 飴玉くんさん» ありがとうございます！彼女は立場も力も弱い人間なので、ずる賢く生きる必要があるんですよねぇ。 (3月5日 17時) (レス) id: 3efe28aec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：和三盆 | 作成日時：2023年12月8日 15時
