Summer～短編集～(JW) (ページ35)

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＿＿＿ガタンゴトン

行きと同じように電車に揺られる私達。
さっきと違うのは、繋がれた手だけ。

「…俺、あと二駅や」

まだまだ知らない街の中、のんちゃんは突然そう言った。

思ってたよりも私達は遠くで暮らしてるみたい。

見知らぬ駅に着く。

あと一駅か、なんて思った時、スーツを着た男女が乗ってきた。

男の人が女の人の手を握ってふわりと笑う。

「桐山先輩、恥ずかしいです…」

女の人は顔を赤くしているけど、どこか嬉しそうで

『…いいなぁ』

ふと声が漏れた。

私ものんちゃんと笑い合いたいよ、

もっと話したいこと沢山あるのに、

だって、まだ出会ったばっかりだよ？

どれだけ離れたくないと思っていてもその時は来てしまうもので、

ゆっくりと止まる電車。

立ち上がったのんちゃんは、

「ありがとう、柚月」

それだけ言って降りていった。

あれから結構経ったけど、私の気持ちは相変わらず

テレビにのんちゃんが出ていたら目を離せなくなっちゃうし、ほら、今だって…

「え、忘れられない人ですか？
あぁ、1人居ます。今でも大切な人。」

私の事を覚えている保証なんてどこにもないのに、

あなたがあの日と同じ笑顔でそう言うから、

また期待しちゃうんだ。

END