至上主義者の伽

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部下の男たちは氷月くんに殺された可能性が高い。

このままクロムくんが死ねば、戦いで多くの血が流れるのは免れない。村人を巻き込んだ司帝国の住人や千空くんも是非を問われ、この戦争の決着が長引く事になる。

氷月くんはそれがわからない人ではない。
生かして捕虜にする選択を簡単に捨てるということは、この戦争でいくら人が死のうと構わないということだ。

敵も……味方も。


.


司くんが羽京くんに合図を出すと、矢を射てクロムくんを助ける。

…うん、やっぱり君は殺すことを選ばないんだね。

矢1本で170cmの男の子の体重を支えておけるわけがない。落ちるのは時間の問題なので、すぐに近くに立っている木を根元から蹴り倒し、クロムくんがぶら下げられている木へ橋をかけた。


「これ以上責めても無意味だね。彼は飴でも鞭でも裏切らないよ」

「来た目的は推測するしかないですね。
羽京クン、このクロムクンをを発見した場所は？」


氷月くんから羽京くんへの質問にギョッとするクロムくん。


「例の奇跡の洞窟に、クロムくん1人で偵察に来てたよ。まあ、狙いは硝酸かな」


確かに硝酸があれば火薬や復活液に使えるが、このタイミングで千空くんがそんな非合理的なことをさせるはずがない。

つまり羽京くんはクロムくんを庇っている。

…クロムくんのことは羽京くんに任せて心配なさそうだね。


「科学使いといっても炎色反応で楽しんでるような原始人類さんだったの忘れてた〜。それなら1人で乗り込んで来てもおかしくないねぇ。

羽京くん。引き続き(・・・・)クロムくんのことよろしくね〜」

「……わかったよ」

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