嘘吐きな『』幸福論

理論3 ページ5

大した正装もせず。大した物も持たず。
そんな状態で俺は家を出た。

余り天気が良いとは言えないが、別に何だって構わない。

「本当なら、A姉も…」

自分の考えが甘い事は重々承知している。


が。

あの優しいA姉が、本当に人を憎み、家族を裏切り、全てを見殺しにしたのか、と。

いや、そうなのだ。
そうだとは分かっているのだ。
本人だってそう言っているし、筋だって通っている。

でも、なら。

なら、A姉の部屋から聞こえる啜り泣くような声は、何だって言うのか。


『馬鹿ね、誰があんな血生臭い殺し合いなんかするために生きるかっての』
『死にたく無きゃ殺すか、騙すかしか無いじゃない』


あのときの冷たい視線は今でも覚えている。
その時の衝撃は傷を深く抉った。

けど、それでも。

「信じていたい、か…」

馬鹿らしい。
本当に馬鹿らしい。

そうしている内に目的地にたどり着いた。


「泉里姉…」

お墓の前に雑に座り込み、手を合わせた。

目を開けるとそこにあったのは。



一輪の白い花だった。





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「天馬は、もう来たかな…」

天馬は今日一日休みだった筈だし、午後にもなっていればこの後に来ることは無いだろう。

そこには何も無い。
天馬の事なのだから何も持って来ていなくたっておかしくない。

そして、お墓の前に一輪、白い花を供え、その場を去った。

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もうすぐ単行本発売ですね！
って言ってもまだあるけど！
5冊くらい買いたい。

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