縁日の約束【次元大介】 (ページ14)

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拾肆ページ14

「そんなに着崩して、一体どうしたんだい？」

「ババァ……」

勢い良く病室の扉を開けると、呑気に針仕事をしているババァがそこにいた

「お母さん、一体どうしたの？」

「暑くてね

お茶を飲もうと思ったんだが、中々キリが悪くてね

ダラダラと引き伸ばしてたらいざ立ち上がった時にふらついたんだよ

偶然それを見た豆腐屋の亭主がここまで連れてきてくれたんだがね、人の話を聞かずに慌てて出て行っちまった」

「つまり？」

「軽い脱水とその時転んで出来たたんこぶ位です」

背後から医者の声がして振り向くと、随分と久しい顔がこちらを向いていた

「久しぶりだな、次元」

「おう、四年ぶりか」

「そのくらいだな

……ってことで、心配させて悪かったが特に異常はない
念のため検査もしたが、至って健康だったよ」

「流石、妖怪ババァ」

「聞こえてるよ、ヘタレ不器用」

変わらずの口の悪さに俺達がため息をついていると、緊張が溶けたのかAがへなへなとその場にしゃがみこむ

「おいおい… 」

そう呟いて屈むと、声を出さずに泣いているAの肩をそっと抱く

「お、やるな次元」と小声で茶化してくる医者(バカ)に「うるせぇ」と返すと、向こうからやれやれとため息混じりの声が飛んできた

「イチャコラすんなら病院の外でやりな」

「ババァ、このやろう…」

「まぁまぁ次元、抑えろって…

A、大事を取って今夜はお母さんこっちで預かるから服とか持ってきてくれるか？」

その言葉に小さく頷くA

投げ掛けられた煩い二つの視線にやれやれとため息をつくと、俺はまだ震える肩を抱いて病室を後にした＿＿