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『あー、良いお風呂だった』
うちわを扇ぎながら寝転がると、頭上に不機嫌な顔をした実弥に見下ろされた
──ちょっとでも笑ったら良い男なのに…
そんなこと言ったらまた愚痴愚痴と言われるんだろうなぁと思いながら 上体を起こすと、アタシに向かい合うように実弥が腰を下ろした
『んで?用件はなんだっけ?』
「……今回の闘いは今までにねェ程 重要なものになってくる
いや、最後の闘いにしてみせる」
『…』
「だからこそ戦力が必要だ
……あとは言わなくてもわかるだろ
元 風柱のテメェも闘いに参加しろ」
『やだ』
実弥が言い終わる直後に返事をすると、青筋を立てながら実弥はこちらを睨んでくる
──こりゃ、嫁もまだ取ってないな
全く、宇髄のように余裕を持てば 実弥だって嫁の一人や二人簡単に出来るだろうに…
そんな事を考えながら、目の前に置かれていた湯飲みに手を伸ばすと
触れる寸前 ふわりと風が流れて、湯飲みが木っ端微塵に割れた
『あーぁ、折角 質屋の田助がタダでくれたのに』
「湯飲みの心配する暇があるなら闘え!!」
血生臭い刀が首筋に当てられ
鬼の形相の実弥の顔が目の前に迫ってくる
はぁ…、本当にこの子は変わっていない
沸点が低いのも、言葉遣いがなってないのも
__そして、まだ希望を持っているのも
呼吸を整え、小さく 短い息を吐き出す
何かに気づいたのか、実弥は咄嗟に刀身を前にずらすと
次の瞬間、突風に煽られたようにはね上がりながら部屋の奥へと吹き飛んでいった
『あーぁ、障子も
部屋の向こうから聞こえる実弥の圧し殺すような声を聞きながら アタシはため息をついて呟く
どっこらしょっと立ち上がると、アタシは部屋から去る間際に実弥に向かって声をかけた
『去るのは勝手だけど
散らかした部屋は片付けておくように
_それと、
忘れたようだからもう一度教えてあげる
"求めるな"
……アタシから言えるのはそれだけだよ』
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作者名:茶柱 | 作成日時:2019年12月9日 3時