plus one 【警察学校時代】

最強のセコムｰ二人目 ページ10

A「松田って臭くないよね」




褒め言葉なのか解らずに次の言葉を待っていると、Aは犬のように鼻を近づけながら俺の周りの空気をかいだ






A「お姉ちゃんは部屋も服もタバコ臭いのに」





「あのヘビースモーカーと一緒にするなよ」





A「松田も結構吸ってるでしょ？

あ、まさか火をつけてないとか？」





「それ、仮にバレたら恥ずかしいじゃすまされねぇな」





そう言って俺は煙草外してAに見えるように灰を落とした






A「体に良くないよ」





「我慢するのも体に良くねぇよ」





A「ふーん… そんなに美味しいの？」





「別に

……まぁ、敢えて言うなら
口寂しいってとこか」






そう言うと何か考え込むように黙るA




─お前が代わりになるなら止めるかもな

……なんて言ってもコイツは理解出来ないだろうから言わない


それができてたら
俺達は今頃こんなに苦労してない






A「あ！」




「……嫌な予感がするな」





そう言うや否や、Aは俺の口から煙草を奪い そのまま灰皿へ投げ込んだ





「おい、何す──ｯ」





口をすぼめた瞬間、煙草に似た何かが口に突っ込まれる






A「ｱﾀｼのおやつの残りあげるね」





「湿気てるぞ」





A「朝イチ開封したからしょうがない」






何時のおやつだと思っていると、間髪いれずに再びAは声をあげた






A「あ！ それ、最後の一本だった…」




「そりゃ残念」




A「新しいの買ってよ」




「たった一本で一箱請求か

とんでもねぇ詐欺だな」






A「ちぇー

……仕方ない、新しいの買ってくる」





「俺 珈琲な」





A「えぇ……」





「これでプレミアム商品買ってこいよ」





A「いってきます」






たったプレミアム差額30円で動く女


それに動かされる4人の男






「……馬鹿だねぇ…」






自分に言い聞かせるように呟くと、

突然目の前にAの顔が現れた






A「隙あり!!」






そう言って、ポッキーゲームのように反対側の菓子を咥えるA



一瞬、息がとまる程 Aが近づくとパキッと音をたてて菓子が折れた





A「ﾍﾍｯ、短くなったけど 帰るまではそれで我慢しておくよーに！」






バタバタと出ていくAの姿を見送り、俺は残りを静かに食べ進めた








「……甘すぎんだろ」

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