警視庁捜査一課 ▼第3係▼ ２

あの頃 ページ38

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みんながいなくなった3係。



あいつ…焼肉って聞いてけろっとしてたな……



デスクの一角にはカエルの置物。
リアルなものからキャラクターみたいな可愛いやつまで。



目が合った気がしてついつい買っちゃうんだよ…



アイマスクにマグカップ
俺の周りにどんどんカエルグッズが増えていく。




デスクに項垂れるとその中のひとつを指で弾いた。





ケロッ





首がバネになった丸い目のそれはさっきの亜子みたいだ。



弾みで手前のカエルが倒れる。






それは一際思い出深い、
大切なものだった───








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中学の時、親に連れられて行った引っ越しの挨拶。良くしてくれたおばさんの家だから行く気になれた。




そこにはランドセルを背負う女の子がいて。



いつもやんちゃしてた俺に


“強いね”
“誰か守ってるの？”って。








“でもあんまり怪我しちゃ
お家にいる人心配するよ──”








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別れの日。






“隆くんは強いから警察官になるんだよ”



将来を決めてしまう無邪気なその子におばさんが笑う。



“守るんだよ！わたしだっておばさん守るもん！”









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“はい、あげる！”



そう言って渡されたのはビニール素材のカエルの指人形。あれから捨てる理由もなくずっと取ってある。




引っ越してすぐは指にはめて遊んで


キレると投げてどっか失くして


見つかったと思ったらあの日を思い出して…──








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ある日友達を事故で亡くした。

よその連中から煽られたんだと俺は思う。





仕返してやる───

だけどその時の俺は酷く落ち込んでいて。



茫然と暗い部屋に座り込んでると、食事を運んできてくれた親が言う。



“懐かしいな、それ”



目線は電気をつける紐に括り付けたカエル。



“あの子元気にしてるかな”


“小学校に上がってすぐ事故で両親亡くしたって”


“あの時あんなに可愛く笑ってたから
きっと元気にしてるよね”






───その時

おばさんと女の子の言葉を思い出す。






“前はめそめそ泣いてたのに…
隆二くんのお陰で強くなれたのかしらね”






“隆くん警察官！
わたしだっておばさん守るもん！”









荒れてた俺は
これじゃいけないと思った。





プルレスの照明になった今、


こうやって目の届く場所に置いている。






“強さ”が何か。教えてくれた彼女に見守られてるみたいで───









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